IPEF関連会合の成果、米産業界は投資環境改善などに期待も貿易分野でさらなる進展促す

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月20日

日米を含むインド太平洋経済枠組み(IPEF)参加国は11月16日まで米国でIPEF関連会合を開催し、IPEFサプライチェーン協定に署名したほか、クリーン経済と公正な経済の各分野の交渉で実質妥結に至った。IPEF関連会合の成果を受け、米国の産業界では、サプライチェーン協定などがビジネスに利益をもたらすことを期待しつつ、貿易分野の交渉の今後の進展を強く促す声が目立つ。

全米商工会議所のジョン・マーフィー国際政策担当シニア・バイス・プレジデントは11月16日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、サプライチェーン協定に関し、多くの米国企業が「最近の(新型コロナウイルスの)パンデミックで見られたようなサプライチェーンの混乱が将来起きた時に貴重な役割を果たすことができる」と評価していると述べた。公正な経済に関する合意については、法的拘束力のある反腐敗への取り組みが盛り込まれたことを歓迎した。全米外国貿易評議会(NFTC)は11月17日、今回の会合で発表された協力は「インド太平洋における米国の関与を示す重要なシグナルだ」とするジェイク・コルビン会長の声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同会長は、IPEFがヘルスケアや製造業、クリーンエネルギー、デジタルサービスといった同地域にまたがる分野におけるビジネス上の障害に対処する、商業的に意味のある成果をもたらすとの期待を示した。一方、今回妥結に至らなかった貿易分野に関しては、交渉の停滞に懸念を表明しつつ、米国がデジタル貿易に関する明確なビジョンを示すよう促した。

インド太平洋地域でビジネスを行う米国企業などが加盟する米国インド太平洋協会(AAIP)は、IPEFクリーン経済投資家フォーラムなどの取り組みは地域の投資条件を向上させると評価する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。貿易分野については、交渉妥結に至らなかったことが「大きな機会の損失を意味する」としつつも、AAIPとして、デジタル貿易や人工知能(AI)の基準などといった論点について、米国や各国政府との関与を深める意向を示した。情報技術産業協議会(ITI)のジェイソン・オックスマン会長兼最高経営責任者(CEO)は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、バイデン政権に対し、今後の貿易分野の交渉では「米国が過去数十年にわたり維持してきた貿易に関する高い基準」にあらためてコミットするよう求めた。また、「インド太平洋地域における経済的、外交的、ならびに戦略的な協力の強化は、米国のグローバル・リーダーシップを確保する上で極めて重要だ」と強調した。

米国のジョー・バイデン大統領は11月16日の会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、貿易分野の労働や環境をめぐるルールの協議で進展があったとしたものの、「まだやるべきことがある」と語った。貿易分野の交渉を担う米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は同日、記者団に対し、今後の交渉でも「労働者中心の貿易」を重視する方針で妥協しない姿勢を示した(政治専門紙「ポリティコ」11月17日)。

(甲斐野裕之)

(米国)

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