全米自動車労働組合(UAW)、ストライキは継続もデトロイト3との交渉に大きな進展

(米国)

シカゴ発

2023年10月10日

全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長は10月6日、ソーシャルメディア上でデトロイト3との労使交渉(注)の進捗を発表した。3社との交渉に進展があったため、3週間前のストライキ開始以来、追加ストライキの呼びかけは初めて行われなかった。

フェイン会長は「われわれのストライキはうまくいっているが、まだまだだ」と述べる一方で、3社のうち特にゼネラルモーターズ(GM)との交渉で大きな成果があったことを報告した。UAWは、今回の進捗の発表に至るまでは、GMのテキサス州アーリントン組立工場〔フルサイズのスポーツ用多目的車(SUV)であるシボレーのタホ、サバーバン、GMCのユーコン、ユーコンXL、キャデラックのエスカレード、エスカレードVを生産〕でのストライキを計画していたが、同社が電気自動車(EV)用バッテリー工場で働く労働者をUAWの全国労働協約の対象とすることで合意したため、同工場でのストライキを見送った。ガソリン車からEVへの移行期の従業員の処遇については、これまでの3社との交渉で大きな争点となっていた。カリフォルニア大学バークレー校のハーレー・シェイケン教授は「これはEVへの移行を定義づけるものだ。GMが基本合意で譲歩すれば、フォードやステランティスもそれに応じるのは明らかだ」と述べている(ロイター10月6日)。関係者によると、UAW組合員の約20%にのぼるガソリン車関連の労働者は、EVへの移行にともなう雇用の保障について懸念しており、今回のGMによるEV用バッテリー工場労働者をUAWの労働協約の対象に含めるとする合意は、この懸念を和らげるとのことだ(CNN10月6日)。

このほか、フェイン会長の発表によると、賃上げについては現在、フォードが契約期間の4年間で23%、GMとステランティスがそれぞれ20%の昇給を提案、生計費調整(COLA)についてはフォードとステランティスで2007年時点での計算方式が復活、GMからは期待から程遠い提案がなされていると発表した。なお、退職手当については、3社のいずれとも依然として大きな争点になっているとのことだ。

(注)UAWの要求は、新たに雇用された労働者の賃金を低く設定し従業員を二分する給与体系の廃止、賃金をインフレ率と連動させる生計費調整(Cost of Living Adjustment, COLA)、4年間で30%(交渉開始時は40%、9月11日に36%)の昇給、電気自動車(EV)への移行に伴う雇用の確保など(2023年7月18日記事参照)。

(星野香織)

(米国)

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