英国、名目賃金上昇率は高止まり、約2年ぶりにインフレ率を上回る

(英国)

ロンドン発

2023年10月19日

英国国家統計局(ONS)の10月17日付発表によると、2023年6~8月期の賞与を除いた名目賃金の上昇率(年率、以下、賃金上昇率)は7.8%と、数値が比較可能な2001年以降の最高を記録した前期(7.9%)に次ぐ高水準となった。賞与を含んだ場合の上昇率は8.1%となった。

民間部門の賃金上昇率は8.0%。産業別にみると、金融・ビジネスサービス部門の上昇率が9.6%で最大、製造業が8.0%と続いた。

公共部門の賃金上昇率は6.8%で、2001年以来、最も高い伸び率を記録した。2023年6月から8月に給付された国営医療サービス(NHS)職員と公務員への一時金の影響から、賞与を含めた場合の上昇率は12.5%となった。

今回の発表で、前期の2023年5~7月期の賃金上昇率も7.9%と上方改定された。これに伴い、2023年5~7月期と6~8月期に関し、賃金上昇率が平均消費者物価指数(CPI)上昇率を上回ることとなった。賃金上昇率が平均CPI上昇率を上回るのは、2021年8~10月期以来約2年ぶり。なお、ONSが2023年10月18日に発表した9月単月のCPI上昇率は6.7%で、微減するとの予測に反し、横ばいとなっている。ONSは食品・非アルコール飲料が低下した一方で、自動車燃料価格の高騰が影響したとしている。

求人数は減少傾向が継続

ONSが10月17日に発表した労働市場統計によると、2023年第3四半期の平均求人数は前期比4万3,000人減の98万8,000人だった。新型コロナウイルス感染拡大前の水準よりは依然として上回っているものの、2022年3~5月期をピークに、減少傾向が続いている。

内訳をみると、管理・支援サービス業で1万人減、次いで専門職・科学・技術職で9,000人減だった。減少率でみると、不動産業と管理・支援サービス業がそれぞれ29.6%、15.5%と大きくなっている。

(松丸晴香)

(英国)

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