電子廃棄物ビジネスにポテンシャルも、バリューチェーンや政策面で課題

(ガーナ)

アクラ発

2023年10月30日

在ガーナ・ドイツ商工会議所主催の「西アフリカ・クリーン・環境エネルギー見本市およびカンファレンス(WACEE)」が10月18、19日に、アクラ市内で開催された。「持続可能な移行をリードする」をテーマに、西アフリカにおけるクリーンエネルギー、水、サーキュラーエコノミーの3つの中心的なトピックにおける最近の動向と分析が紹介された。特に、気候・グリーンファイナンス、エネルギー移行、持続可能性に重点が置かれた。展示エリアにはドイツとオーストリアの国別パビリオンが設置され、約30社の展示ブースが設けられた。

19日午後のパネルディスカッションでは、「電子廃棄物処理にあたって、ガーナはどのような効率的なシステムを構築できるか」というトピックで、廃棄物マネージメントやリサイクル、電子廃棄物(E-Waste)について議論された。このトピックの背景には、ガーナに先進国から大量の中古電子機器などが輸出されており、首都アクラ近郊にあるアグボグブロシー地区が世界最大級の電子廃棄物の不法投棄場として大きな社会問題となっていることがある。

パネルディスカッションを通じ、社会課題である電子廃棄物処理のビジネスのポテンシャルを感じさせつつも、各セクターの登壇者からさまざまな課題が言及された。ガーナ環境保護局のラリー・コトー氏は「電子廃棄物の収集においてインフォーマルセクターが重要な役割を担っており、バリューチェーンの中には他にも運搬やリサイクルなどの役割を担う多様なプレーヤーがいる。電子廃棄物リサイクルのバリューチェーンを統合し、効率的なシステムを構築する必要がある」と述べた。また、環境アナリストのサムスン・アティエモ氏は「現在は、収集されたプリント基板などの電子廃棄物が未加工で国外へ輸出されている。電子廃棄物に含まれるプラスチックもリサイクル可能であるにもかかわらず廃棄されている現状で、中古の原材料に付加価値を付けることができていない」と指摘した。電子廃棄物のリサイクルも行う廃棄物処理企業ジールのCEO(最高経営責任者)クウェク・エニン氏は「政策実施機関による適切なサポートやガイダンス、廃棄物から貴金属を抽出する適切な方法が確立できれば投資回収も可能になるだろう」とコメントした。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

また、パネルディスカッションでは、ドイツのエコロジコンと環境クラスター・バイエルンの2社が進める、再利用ができないプリンターの使用済みインクカートリッジをプラスチックや金属などに分解し、2次原料を生成するモデルを用いたプロジェクト、レソカートが紹介された。同プロジェクトは、ドイツ環境省が出資し、現在は実証事業の段階だ。

そのほか、展示エリアには、電子廃棄物のリサイクル事業を行っているエレクトロ・リサイクリング・ガーナも出展した。電子廃棄物以外には、太陽光発電やバイオマス廃棄物など多岐にわたるエネルギー・環境分野の企業などが展示を行った。

(数実奈々)

(ガーナ)

ビジネス短信 bf34cf44bd04d5da