英政府、AI関連施策を相次ぎ発表、医療機器分野では新たなサンドボックスも

(英国)

ロンドン発

2023年10月31日

英国政府は11月1日から2日に同国で開催されるAIセーフティサミット(2023年10月31日記事参照)に先立ち、さまざまな分野でAI(人工知能)関連の施策を発表した。

リシ・スナク首相は10月26日、AIを活用することで、従来治療ができなかった病気の治療法の発見に革新的な進歩を生むことできる分野を対象に、1億ポンド(約182億円、1ポンド=約182円)を投じることを発表。政府、産業、国営医療サービス(NHS)、学術界、医療研究関連の慈善団体などががん治療や認知症の対処などに取り組んできたが、AIの活用方法を検討することで、さらにその取り組みを加速させるとしている。今回発表した資金の対象は、臨床環境でAIを活用してさまざまな症状の治療結果の改善に取り組むプロジェクトのほか、広範な保健上の課題に対する、汎用(はんよう)性の高い応用事例につながる斬新なAI研究も含まれる。

教育省は10月30日、オンライン教材を通じて教員の支援を行うオーク・ナショナル・アカデミーに対し、最大200万ポンドを投じ、AIを活用した新たな教育ツールの開発を支援することを発表。そのほか、11月には教育での生成AI活用に関する意見公募の結果を公表するとしている。

医薬品・医療製品規制庁(MHRA)も同日、新たな規制サンドボックス(注1)「AIエアロック(Airlock)」を発表(注2)。運用開始は2024年4月を予定している。NHSの施設で厳格な安全管理下、AIを用いた医療機器などの技術を承認前の段階で実証を行うことにより、実際の現場での利用に必要な事項を開発者が理解し、提供できるようにするとしている。

クリス・フィリップ内務省国務相は10月29日、国内の警察に対し、AI利用を拡大するよう指示。把握済みの犯罪者の追跡のため、遡及(そきゅう)的な顔認識技術の利用拡大のほか、リアルタイムの顔認識技術運用のより広範な実施についても推奨した。

(注1)イノベーション促進のために、一時的に規制の適用を停止するなど、新たなビジネスの実証実験を実現する仕組みを設ける制度。

(注2)AIを用いた医療機器などに対する規制枠組みの方針はMHRAのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(山田恭之)

(英国)

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