ポーランドで総選挙、与党は過半数確保できず、政権交代の公算大

(ポーランド)

ワルシャワ発

2023年10月23日

ポーランド議会の総選挙外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(上院100議席、下院460議席)が10月15日に行われた。8年ぶりに政権交代する可能性がある。上下両院の投票率はそれぞれ74.31%と74.4%となり、ポーランドが民主主義へ体制転換した1989年以降、初めて70%を超えた。

国民選挙管理委員会(PKW)が10月17日に発表した最終集計結果によると、政権3期目を狙っていた保守与党「法と正義(PiS)」は下院で194議席を獲得した。PiSが第1党となったが、欧州理事会(EU首脳会議)の前常任議長であるドナルド・トゥスク元ポーランド首相率いる「市民連立(KO)」が、中道の「第3の道」および「新左派」と合わせて248議席となり、野党勢力が多数派を形成できる見込み。仮にPiSが18議席を獲得した極右野党「同盟(注1)」と連立を組んだとしても、過半数には届かない(添付資料表1参照)。

10月24~25日に、ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領が、国民議会入りした各党の代表と個別に協議を行う予定だ。同大統領は選挙期間中にも、勝利した政党が支持する候補者に政権樹立の使命を託すことを示唆していたことから、地元メディアは、同大統領がPiSのマテウシュ・モラビエツキ現首相に政権樹立を一任する予定だ、と非公式に報じている。新首相は、任命の日から14日以内に活動計画を国民議会に提出し、信任投票を得る。現地メディアは、この投票はおそらく否決され、現野党が政権を樹立することになる、と予測している。

PiSは2015年に政権の座に就いて以来、「法の支配」や、移民、LGBTなど性的少数者の権利を巡ってEUと対立してきた。国内の経済専門家は、政権交代すれば、EUとの関係が改善し、「法の支配」などを巡って凍結されているEUの復興基金の拠出が開始されるという見通しを示している。

上院では、PiSは34議席しか獲得できず、野党が2023年2月に結んだ上院議員選挙協力協定、いわゆる「上院協定」(注2)に圧倒的に敗北した(添付資料表2参照)。

国民投票の結果は拘束力を持たず

今回の議会選挙と同日に、国民投票も実施された。その内容は、(1)国家資産の外国企業への売却、(2)定年の年齢引き上げ、(3)ベラルーシ国境の壁の撤去、(4)不法移民の受け入れ、の4点の是非を問うものだった(添付資料表3参照)。

国民投票に参加した国民の大多数は、各議題に反対票を投じた。ただし、今回の投票率は40.9%で、ポーランドの憲法で定められている50%に達しなかったことから、拘束力を持たない結果となった。

議会選挙の投票率は過去最高を記録したものの、国民投票の投票率が低かったのは、野党が国民投票を「与党の政治ゲーム」とし、ボイコットを呼びかけた結果とみられる。

(注1)正式名称は「自由と独立同盟」。

(注2)「上院協定」とは、2023年2月に野党により締結された、2023年10月15日の議会選挙において上院議員統一候補を立てる協力協定のこと。上院選挙は小選挙区制であり、野党は100の選挙区にそれぞれ1人ずつ統一候補を擁立することで合意に達した。一部の野党は、2019年の議会選挙の際も、上院において統一候補を立てて選挙に臨んだ。

(マルタ・ゴロンカ)

(ポーランド)

ビジネス短信 a711a9fe15db5e49