9月の物価上昇率、2カ月連続で2桁突破、加速が続く

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年10月31日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は10月12日、9月の消費者物価指数(CPI)上昇率が全国平均値で前月比12.7%増だったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。CPI上昇率が単月で2桁に達するのは2カ月連続。過去32年間で最も高い上昇率となった。前年同月比(年率)では138.3%増と、8カ月連続で100%を超えた(添付資料図参照)。2023年1~9月累計の物価上昇率は103.2%に達した。

前月比の伸び率を9月単月でみると、季節によって価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは14.7%増で、8月の10.7%増を上回った。エネルギーや公共サービスなど価格統制された財・サービスは8月と同水準の8.3%増だった。季節要因と価格統制要因を除いたコアインフレ率は前月比13.4%増で、前月の13.8%増からわずかに減速した。

前月比の伸び率を費目別にみると、上昇率が高かったのは、衣類・靴類の15.7%増、娯楽・文化の15.1%増、食品・飲料(酒類を除く)の14.3%増で、平均値を上回った。年率では、CPIに占める比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)が2.5倍、外食・ホテルが2.6倍と大きく伸びた(添付資料表1参照)。

ジェトロが10月16日にブエノスアイレス市内で独自に行った価格調査(添付資料表2参照)では、価格統制の対象品は1桁台の上昇にとどまったが、オリーブオイルやビールなどは2桁上昇した。

民間エコノミストらによると、10月単月のCPI上昇率は8月と9月に比べて減速するが、2桁台にとどまるとしている(10月12日付の現地紙「アンビト」(電子版)。2桁台にとどまる主な理由は、10月22日に行われた大統領選挙の本選挙後(2023年10月24日記事参照)の約2週間前から並行為替レート、いわゆる闇レートの下落が進んだことだ。月初めは、1ドル700ペソ台後半だった闇レートは、10月10日には1,000ペソを超えた。もう1つの理由は、本選挙後の公定レートの切り下げ観測だ。しかし実際には、本選挙後に公定レートの切り下げはなく、1ドル350ペソに固定されたままで、闇レートも1ドル1,000ペソ前後で推移している。しかし、多くの消費者が本選挙後の物価の急上昇を懸念し、生活必需品や家電の購入を急ぎ、需要が急増したことは物価上昇を後押しするとみられる。11月19日に決選投票が行われるため、先行き不透明感から負のサイクルが続く可能性がある。

写真 大統領選挙の本選直前に買い物を急ぐブエノスアイレス市民(ジェトロ撮影)

大統領選挙の本選直前に買い物を急ぐブエノスアイレス市民(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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