タイ、EUとのFTA交渉を正式に開始

(タイ、EU)

バンコク発

2023年10月05日

タイ商務省貿易交渉局(DTN)の9月20日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、EUとの自由貿易協定(FTA)締結に向けた第1回交渉が9月18日から22日にかけて、ベルギーのブリュッセルで正式に開催された。オラモン・サッタウィータムDTN局長は、外務省のほか関係省庁・団体(商業、金融、農業・協同組合、工業、天然資源・環境、労働など)から構成されるタイ代表団と共に、欧州委員会のクリストフ・キーナー南・東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド担当ユニット長が率いるEU交渉団と協議を行った。

欧州委員会は9月29日に第1回交渉の結果をウェブサイトに掲載外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、協定の草案についても確認することができる。交渉は20グループに分けて行われたが、中でも「貿易および持続可能な開発(TSD)」章が注目される。欧州委員会の3月15日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、持続可能性は本協定の心臓部に位置付けられており、同章の内容を頑健で実施可能なものとすることが目標とされている。

TSD章の草案内容をみると、ILOなどの国際標準に沿った労働基準、ジェンダー平等、環境基準とガバナンス、気候変動、生物多様性、森林保全、海洋生物資源・水産養殖、持続可能な開発を支援する貿易投資などが盛り込まれている。関係者によると、EU側は労働基準について、タイが未批准のILO中核的労働基準のうち、第87号(結社の自由及び団結権の保護条約)、第98条(団結権及び団体交渉権条約)、第155号(職業上の安全及び健康に関する条約)の3条約について、本協定によって批准を促したい構えだという。

タイが既存で締結しているFTAには、EUとのFTA で検討されているようなTSD章を含む協定は存在しない。先般、TSD章が盛り込まれた改正ASEANオーストラリア・ニュージーランドFTA(AANZFTA)が実質的な合意に至ったが(2023年10月2日記事参照)、その内容はEUとのFTA草案とは大きく異なっている。他方、タイがEUに先んじて交渉している欧州自由貿易連合(EFTA)とのFTAでは、TSD章を含むことが明らかになっている。EFTAとのFTAは第6回交渉(9月12日~15日、バンコク開催)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますまで完了しており、EUとのFTAにおけるベンチマークになる可能性がある。

また、交渉団に参加していたタイ工業省工業経済事務局(OIE)は、タイ・エネルギー省と、9月18日から19日にかけてEU側担当者とエネルギーおよび原材料(ERM)に関する課題について討議した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますという。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ、EU)

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