暖房設備に再エネ使用を義務付ける改正法成立、2024年1月施行

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2023年10月17日

ドイツ連邦参議院(上院)は9月29日、暖房・給湯設備(以下、暖房設備、注1)で再生可能エネルギー利用を義務付ける「暖房法案」を承認した。同法は建築物エネルギー法(GEG)など複数の関連法を一括して改正するもの外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。10月16日現在、同法は未公布だが、大部分が2024年1月1日から施行される。

ドイツの連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)によると、ドイツでは一般世帯の暖房設備のうち、2022年はガス使用のものが全体の49.3%、石油使用が24.7%を占めた一方、地域熱供給は14.2%、電気ヒートポンプは3.0%の普及率外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだった。新設の暖房設備の使用期間は通常20~30年と考えると、2045年までの気候中立達成には再エネ使用の暖房設備への転換が急務だ。

GEG改正により、2024年1月1日から、住宅・産業用地などの新興開発地で新たに設置する全ての暖房設備のエネルギー源について、65%以上を再エネ由来とすることが義務づけられる。再エネの使用率が65%以上ならば、暖房設備は再エネや廃熱を利用した熱供給網への接続、電気ヒートポンプ、電気暖房、バイオマス暖房、ハイブリッド暖房(再エネとガス・石油の組み合わせ)、太陽熱暖房などから選択可能だ。加えて「H2-ready (H2レディ)」と呼ばれるガス暖房(注2)も選択できる。

既存の建物や、建物を取り壊した後の空き地に建設する新築建物に暖房設備を新たに設置する場合、再エネ使用の暖房設備設置の義務は自治体の地域熱供給網の整備計画策定まで猶予される。今後、人口10万人超の自治体は2026年6月30日までに、人口10万人以下の自治体は2028年6月30日までに、地域熱供給網の整備計画を策定する義務を課す法律外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが成立する見通しだ。

既存の建物に設置済みの化石燃料を使用する暖房設備は引き続き使用可能だ。故障した場合も修理して継続使用できる。ただし、2029年1月1日から、地域熱供給網や気候中立のガス供給網への接続が確保できない場合などに、バイオガスなどの再エネ使用が義務化される。再エネの使用率は15%から段階的に引き上げられ、2045年には100%となり、化石燃料を使用する暖房設備は使用不可になる。

政府は補助金、融資、税控除による暖房設備切り替え支援を行う。複数の助成措置を組み合わせれば、改正GEGに適合する暖房設備への切り替え費用の70%まで助成を受けることが可能だ。例えば、申請者は基本的に費用の30%が助成される。課税対象となる所得が年4万ユーロ未満の世帯には、さらに30%の助成が認められる措置などが設けられる。

なお、暖房法は2023年4月に閣議決定されたものの、転換が性急すぎるといった批判があり、猶予期間の設定などの法案修正が行われ、成立までに紆余(うよ)曲折があった。

(注1)改正した建築物エネルギー法(GEG)では、同法の対象となる設備(Heizungsanlage)を「暖房用熱、温水、またはその両方を製造する装置」と定義する。

(注2)天然ガスを使用するが、将来的に水素専焼に切り替え可能な設備。

(作山直樹)

(ドイツ)

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