イスラエル沖を航行するトルコ籍船舶の警戒レベル引き上げ
(トルコ、イスラエル、パレスチナ)
イスタンブール発
2023年10月12日
イスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの武力衝突に関して、トルコの運輸・インフラ省は10月9日、イスラエル沖の航行や、イスラエルとパレスチナの港に寄港するトルコ籍の船舶について、警戒レベルを最高の「3(差し迫ったリスクがある)」に引き上げた。トルコとイスラエル、パレスチナとの貿易は9割以上が海上輸送によるため、トルコの海運業界からは懸念の声が出ている。
トルコ統計機構(TUIK)の発表によると、2022年のトルコのイスラエルとパレスチナとの貿易は、輸出が約71億5,900万ドル、輸入が約24億6,400万ドルの総額約96億2,300万ドル、うち98.6%がイスラエル向けとなっている。
トルコ船主協会によると、イスラエルの港では既に運航の遅れが見られており、武力衝突による寄港数の減少は海運コストを上昇させる可能性がある。現時点では、同国のハイファ港に大きな問題はないが、イスラエル軍の動員が始まれば港湾労働者の人員が不足し、ハイファ港に次ぐ港のアシュドッド港は閉鎖される可能性があるという。国際運輸・物流サービス協会(UTIKAD)からは、ハイファ港は東地中海地域のトランジット港として重要なため、イスラエル向けの貨物だけでなく、同港を経由してレバノンやシリアに向かう海運にも悪影響を与える可能性があるとの懸念が出ている(10月10日付「エコノミム」)。
また、トルコ港湾運営者協会(TÜRKLİM)は、ハイファ港向けの貨物の一部がトルコの港に移る可能性があるが、これはトルコの港湾に混雑さと遅延という問題をもたらすと警告した。観光部門でも、イスラエルを訪問する予定だった地中海クルーズの客船が訪問先をトルコやエジプト、キプロスに変更しているという。(10月11日付「エコノミム」)。
空路についても、ターキッシュ エアラインズと、ペガサス航空は10日、イスラエル行きのフライトを一時運休すると発表した。
(中島敏博)
(トルコ、イスラエル、パレスチナ)
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