中国、セルビアとのFTAに調印、中・東欧の国とでは初のFTA

中国商務部の王文涛部長と、セルビア国内対外貿易部のトミスラフ・モミロビッチ部長は10月17日、中国・セルビア自由貿易協定（FTA）に署名した。同協定は2023年4月に交渉が始まり、約5カ月の期間内に行われた2回の正式交渉と、30回近い作業部会の開催を経て、9月末には実質的に全ての交渉が完了していた。今後は両国の批准手続きを経て発効する。同協定は、中国にとって中・東欧諸国と結ぶ初めての自由貿易協定となる。

同協定により、両国は相互に9割の税目について関税を撤廃し、うち6割を超える税目は協定発効後即時撤廃となる予定だ。具体的な品目としては、中国はセルビアから輸入する発電機、電動機、タイヤ、牛肉、ワインなどについて関税を撤廃し、セルビアは中国から輸入する車、太陽光パネル部品、リチウム電池、通信設備、機械設備、耐火性の建材、農水産品の一部などについて関税を撤廃する。このほか、協定では、物品貿易以外に原産地規則や投資、サービス、知的財産の保護、競争などの領域の規定を定めた。セルビア政府発表によると、同協定がカバーする品目は、セルビア製品の1万412品目と中国製品の8,930品目となる予定だ。

貿易統計データベースのグローバル・トレード・アトラス（GTA）によると、2022年の中国のセルビアに対する輸入額は前年比39.3％増の13億7,378万ドル、輸出額は前年比2.8％減の21億7,797万ドルだった。主な輸入品目（HSコード2桁ベース）は鉱石（HS26）、銅・その製品（HS74）、電気機器・同部品（HS85）、肉（HS02）、輸出品目は原子炉、ボイラーと部品（HS84）、電気機器・同部品（HS85）、鉄鋼製品（HS73）、車両・同部品（HS87）などとなっている。2019年から2022年にかけて、両国の貿易額は約2.5倍に急拡大している。

中国商務部は同協定について「第3回『一帯一路』国際協力ハイレベルフォーラム（2023年10月16日記事参照）の重要な成果だ。中国とセルビアはFTAを通じて相互に高いレベルの開放を実現し、質の高い『一帯一路』の建設と、両国の全面的戦略パートナーシップの深化を実現する」とした。セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領は「貿易協定は重大な意義を持っている。私たちは協定を2024年5月か6月までに発効させたい」と述べた（「ユーラクティブ」10月18日）。

（廣田瑞生）