8月下旬~9月の経済活動はわずかに上向き、ストの影響で自動車生産台数は減少、米シカゴ連銀ベージュブック
(米国)
シカゴ発
2023年10月20日
米国連邦準備制度理事会(FRB)が10月18日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック、注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は、8月下旬から9月にかけての同地域の経済活動について、全体的に控えめに(modestly)上向いたと報告した。関係者は引き続き、今後1年間の消費需要は小幅に減少すると予想している。また、多くの関係者が米国景気後退の可能性に懸念を示した。
同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用は緩やかに(moderately)増加し、関係者は今後1年間も同程度の増加率を予想している。多くの企業が技能職の労働者確保が引き続き困難と報告した。一方、労働市場が冷え込んでいるという報告もあった。
個人消費はわずかに(slightly)増加した。自動車以外の小売売上高もわずかに増加した。複数の関係者からは、9月15日に始まった全米自動車労働組合(UAW)のストライキは報告期間中の自動車販売と在庫にはほとんど影響を及ぼしていないが、部品の調達にマイナスの影響を及ぼしているとの報告があった。
企業支出はわずかに(slightly)増加した。設備投資もわずかに増加し、複数の企業で新しい設備やソフトウエアの購入、または既存設備の拡張が報告された。一方で、高金利のために買収を延期している企業や、操業費、人件費、材料費の上昇が設備投資を抑制しているという報告もあった。
製造業の需要は控えめに(modestly)減少した。鉄鋼と金属加工品の受注は小幅に減少した。機械販売は堅調で、自動車部門での需要は減少したものの、インフラ建設用の機械の需要は依然として強く、多くのプロジェクトが進行中という。なお、UAWのストライキにより自動車生産台数は減少した。報告期間の最後には、米国の自動車生産ラインの10%強が一時停止(offline)となった。
2023年の同地区での農業所得は、作物価格の下落によって早期収穫面積の収益の好調さが相殺され、2022年の水準を大幅に下回る見込みとなった。また、牛肉を除き、多くの畜産経営は損益分岐点価格を下回っているという関係者の報告もあった。
地域社会の状況について、地域開発団体と行政機関は経済活動全体にほぼ変化はなし(little change)と報告した。州政府関係者は、税収の伸びはやや減少したが、失業保険の需要は引き続き低水準と報告した。
個々の調査対象項目ごとの詳細は添付資料表参照。全体概況については2023年10月20日記事参照。
(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告や、ビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。
(注2)アイオワ、イリノイ北部、インディアナ北部、ウィスコンシン南部、ミシガン南部。
(星野香織)
(米国)
ビジネス短信 2b039a23978f80eb