イラク中央銀行、民間銀行へのドル送金業務移管を発表

(イラク)

ドバイ発

2023年10月06日

イラク国営通信によると、イラクの中央銀行は9月24日、2024年から対外的なドル送金業務を停止し、民間銀行に業務を移管すると発表した。中央銀行総裁のアリ・モフセン・アル=アラック氏は、この決定が米国連邦準備制度理事会(FRB)との合意の上で行われたものとした。さらに、イラクの対外貿易をユーロ、アラブ首長国連邦(UAE)・ディルハム、トルコ・リラ、インド・ルピーなど、ドル以外の通貨でも決済できるようにする計画だと述べた。

イラクの外貨準備は、2003年以降、FRBによって管理されており、イラク中央銀行はFRBに対して必要なドルを申請して供給を受け、それを公式為替レートによってイラク国内の民間銀行に対して売却してきた。ドルの多くはイラク企業が海外からの商品輸入に対する支払いを行うために使用されているが、このシステムが悪用され、マネーロンダリングに使われているという批判がかねて米国からあった。具体的には、架空の請求書に対するドルでの支払いが行われ、米国の制裁対象となっているイランとシリアに、イラクからドルが流れているというものだ。

このような事態を受けて、米国の規制当局が2022年11月中旬からドル供給の手続きを厳格化した。外貨送金に関するオンラインプラットフォームが導入され、最終的なドルの受取人に関する情報提供を必須化するなどの取り組みが実施された。これにより、イラク中央銀行からのドル要求がFRBによって拒否されるケースが増えたため、イラク国内がドル不足に陥り、イラク・ディナールの価値下落が続いていた。UAE現地紙「ナショナル」(9月25日)によれば、イラクでは2023年に公定レートが1ドル=1,300ディナールに設定されたが、市中レートでは1ドル=約1,540ディナールで取引されている。

また、イラク内務省は為替レートの安定化のため、2023年5月に国内におけるドルでの取引の禁止を通達した。内務省は国内民間企業に対し、イラク・ディナールでの取引を行うという誓約書に署名することを求め、違反者には罰金が科されている。

(オマール・アル・シャメリ、太田尭久)

(イラク)

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