外資法人設立など規制強化へ、約3,000億円相当の資金洗浄事件の発覚で

(シンガポール)

シンガポール発

2023年10月10日

シンガポールのインドラニー・ラジャ首相府相兼第2財務相は10月3日の国会で、マネーロンダリング(マネロン)規制強化に向けて、通貨金融庁(MAS)や内務省など関係省庁からなる委員会を設置すると発表した。委員会の設置は、国内史上最大規模のマネロン事件の発覚を受けてのもの。外資による法人設立や金融機関などへの規制、外国人の就労査証保持者の監視強化に向けた検討を行う。

警察当局は8月15日、資金洗浄などの疑いで同国在住の外国籍の10人を一斉検挙し、これまでに全員を起訴した。9月20日までに差し押さえた現金や不動産(152件)、高級車、宝飾品などは総額28億シンガポール・ドル(約3,052億円、Sドル、1Sドル=約109円)以上になった。

ラジャ首相府相によると、省庁間委員会はMAS、内務省、法務省、人材省、貿易産業省の幹部で構成。同首相府相が委員長を務める。委員会は今後、(1)マネロンに悪用されるのを防止するための企業の構造、(2)金融当局、機関による疑わしい金融取引対策の強化、(3)法人向けサービスや不動産仲介、宝飾品販売など民間事業者による監視、(4)疑わしい活動に対する関係省庁による監視の効率化に向けて、規制の見直しを行う。同委員会は見直し結果を後日発表する予定だ。

また、同首相府相によると、会計・企業規制庁(ACRA)は、外資による法人登記への規制を強化する。非居住者が同国で法人登記する際には現行、ACRA認定の認定登記エージェント(RFA)を介して法人設立する必要がある。RFAは、顧客の非居住者が法人登記するに当たっては、事前審査を行う法的義務がある。ACRAはマネロン対策強化の一環として、RFAに不正行為があった場合の罰則を強化する方針で、2024年初めにも国会に新たな規制案を提出する。さらに、ACRAは居住者による複数の企業の取締役兼任も規制することを検討している。同規制についても、2024年初めに国会に提出する見通しだ。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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