米41州とコロンビア特別区の司法長官がメタを提訴、インスタグラムなどが若年層のメンタルヘルスに有害と主張
(米国)
ニューヨーク発
2023年10月30日
米国ニューヨーク州など33州の司法長官は10月24日、インスタグラムやフェイスブックなどの中毒性が、若年層ユーザーのメンタルヘルスの危機を助長しているとして、米国メタ・プラットフォームズ(旧:フェイスブック)をカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した。併せて、別の8州およびコロンビア特別区の司法長官も各地の訴訟で、メタに対して同様の主張をしている。
訴訟によると、インスタグラムやフェイスブックでは、若年層ユーザーの関心や時間を最大限に引き寄せるビジネスモデルを設計し、若年に損害を与える有害で作為的な機能を導入することで、若者を搾取して利益を得たと主張している。
具体的には、主に次の5つの機能を問題視している。
- ユーザーをプラットフォームに長くとどめ、強制的な利用を促すためにコンテンツを推奨するように設計されたアルゴリズム
- 若いユーザーに害を及ぼし得るメタの「いいね」などで知られる他者との比較機能
- ユーザーが学校にいる間や夜中であっても、メタのプラットフォームに戻るよう誘導することを意図した不断の通知
- ユーザーの身体醜形障害(注)を促進することが知られている視覚フィルター機能
- ユーザーが自主規制して、メタ製品の利用を止めることを阻止するよう設計されている「無限スクロール」のようなコンテンツ表示形式
さらに、メタが保護者の同意なしに13歳未満のユーザーの個人データを収集し、児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)に基づく義務に違反したと主張している。
司法長官らは、こうした状況を改善するべく、この訴訟を通じて、罰則および損害賠償だけでなく、メタの有害とみなされる戦術の阻止を求めている。
訴訟に対しメタは声明で、「10代の若者にオンラインで安全かつポジティブな体験を提供するという司法長官の取り組みに共感しており、10代の若者とその家族を支援するために既に30以上のツールを導入している」として自らが既に一定の対策を導入していると反論するとともに、「司法長官が、業界と協力して10代の若者が使用するアプリに関する基準を共に作成する道ではなく、この道(訴訟)を選んだことに失望している」とコメントした(AP通信10月24日)。
今回の訴訟は、大手テック企業がCOPPAおよび消費者保護法に違反しているとして、州が主導する訴訟としては過去最大規模となる。これに先立ち、米国公衆衛生総監も2023年5月に、インスタグラムやTikTokなどのソーシャルメディアの長期的な利用は子供の精神衛生に悪影響を及ぼすと警告を発していた。ジョー・バイデン大統領は、過去2回にわたる一般教書演説で、議会に子供の安全とプライバシーに関する法案を可決するよう強く促しており、大手テック企業への規制強化を求める圧力が強まっている(政治専門誌「ポリティコ」10月24日)。
(注)日本小児心身医学会によると、他の人からは奇妙には思われないにもかかわらず、本人は自分の体形が醜く劣っていると思い込み、その結果、周囲に不快感を与えたり、軽蔑されたりしていると思い込んでしまう病的な悩みのこと。
(樫葉さくら)
(米国)
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