発電燃料の安定確保で、ガスの統一調達会社を設置へ

(シンガポール)

シンガポール発

2023年10月30日

シンガポールのガン・キムヨン貿易産業相は10月23日、シンガポール国際エネルギー・ウィーク(SIEW)の基調演説で、発電燃料用のガスの安定確保を目的に、一括調達会社の設置を発表した。貿易産業省とエネルギー市場監督庁(EMA)が、発電燃料用ガスの一括調達会社を設置。各発電所からのガス需要を集約して調達を一本化し、発電所にガスを供給する方針だ。

ガン貿易産業相は一括調達会社の設置について、「ガス調達のアプローチを根本的に転換するものだ」と説明した。同国の発電燃料は2023年6月時点で、94.3%が天然ガスだ。天然ガスは現在、発電所がそれぞれ調達を行っている。同貿易産業相は一括調達会社設置の背景として、脱炭素に向けてエネルギー転換が進む中でガスの国際市場が今後、大幅な変動が予想されると指摘した。EMAによると、同社設置のメリットとして、(1)交渉力の強化による、より良い契約条件の実現、(2)調達先の多角化による調達先の集中リスクの軽減、(3)より長期の契約締結によるガス価格と供給の安定化、ができるとしている。

発電燃料の一括調達の開始日は現時点では、未定。発電燃料以外の産業ガスについては、今回の一括調達の対象とならないとしている。EMAは向こう数カ月以内に、発電燃料用のガス調達の枠組みについて、業界関係者からの意見収集を行う予定だ。

アンモニア燃料の発電所・船舶燃料施設設置のプロジェクト、第2段階へ

一方、政府は長期的に、発電燃料として低炭素の水素の導入を計画している(2023年10月24日付地域・分析レポート参照)。同貿易産業相は演説の中で、アンモニア燃料の発電所と船舶燃料補給施設の建設・運営・所有(BOO)の関心表明(EOI、2023年4月末締め切り)に対し、内外企業から26件の応募があったと述べた。EMAと海事港湾庁(MPA)は26件の応募の中から最終候補として、6つのコンソーシアムを選択。両庁は2023年末までに、同6コンソーシアムを対象に、同プロジェクトの提案依頼書(RFP)の提出を求める予定だ。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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