米GMと韓国LGの合弁会社アルティウム・セルズ、UAWと25%の暫定賃上げに合意
(米国、韓国)
シカゴ発
2023年09月01日
米国自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)と韓国のLGエナジーソリューションの合弁会社アルティウム・セルズ(本社:オハイオ州)は8月27日、オハイオ州のバッテリーセル製造工場で勤務する全ての時間給従業員の暫定賃上げで、全米自動車労働組合(UAW)と合意したと発表した。
この合意は同日に批准され、翌28日から、同社のオハイオ工場の時間給従業員全員の賃金が平均25%(時給では3~4ドル)引き上げられた。また、今回の合意によって賃上げはさかのぼって適用され、2022年12月23日以降に働いた時間給も支払われる。アルティウム・セルズは今回の合意は第1段階とし、賃金体系を含む包括的な契約に到達するために、UAWと交渉を継続しているとも発表している。
UAWのショーン・フェイン会長は合意について「アルティウム・セルズのUAW組合員は、米国全土で稼動する電気自動車(EV)関連工場の労働基準を引き上げ可能なことを証明している」と述べ、「この合意は重要な前進だが、第一歩にすぎない。私たちはGM、フォード、ステランティスで、何世代にもわたって自動車工場労働者が勝ち取ってきたのと同じ賃金と安全基準を勝ち取るために、アルティウム・セルズと全てのEV関連工場で闘い続ける」とした。UAWはこれまで同社の労働環境の安全性と賃金を問題視しており(注)、フル稼働時には年間10億ドル以上の連邦税額控除を受けることが可能とされる同工場で、これらの条件が改善されるべきだと主張してきた。
同社のオハイオ工場は2022年12月、大規模なバッテリーセル生産工場で組合結成に成功した全米初の事例となり、米国で唯一組合が組織された稼働中のバッテリーセル工場だ。業界の専門家は、今回の交渉で有利な労使協約が結ばれれば、同社のテネシー州とミシガン州の2工場も組合結成に賛成票を投じる可能性が高いと述べている(デトロイト・フリー・プレス電子版8月27日)。
(注)UAWによるアルティウム・セルズの労働環境と賃金に関する報告書による。この中で、GMが4年前にオハイオ州ローズタウンで閉鎖した組み立て工場が現在も稼働していた場合の従業員の時給が約32ドルなのに対し、より危険で技術を要するバッテリーセル製造工場の従業員の時給は約半分の16.5ドルだとしている。また、製造施設内で有害な化学物質にさらされたという従業員の証言が記載されている。
(星野香織)
(米国、韓国)
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