カンボジア、ALPS処理水放出後も日本食品の輸入禁止せず、影響は限定的

(カンボジア)

プノンペン発

2023年09月22日

カンボジア政府は、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出を受け、人体への脅威となる科学的な根拠はないとして、日本食品の輸入を禁止しないとの立場を発表している(「プノンペン・ポスト」9月3日)。現時点では、カンボジアの日本料理店や卸売業者への影響も一部に限られる状況だ。

ジェトロが9月6日から18日までに行った現地の日本料理店や卸売業者へのヒアリングによると、カンボジアのすしレストランでは、ALPS処理水放出後に一部の客から原産地に関する問い合わせや予約キャンセルがあったが、限定的だったという。日系卸売業者は、商品の販売先の一部のホテルなどは当初、日本産水産物の安全性を気にしていたが、国際的な安全基準に合致することを説明したところ、注文は現在止まっていないと話した。9月14~16日にプノンペンで開催された国際食品展示会「カムフード(CAMFOOD)2023」に出展した日本産水産物を扱う日系卸売業者によると、同社ブースを訪れたレストラン関係者などは前年よりも多く、会期中にALPS処理水関係の目立った質問もなかったという。

一方、カンボジア人のSNS上では、中国などから発信されているALPS処理水関係の投稿に字幕を付けて発信をしているものも見受けられる。しかし、上述のヒアリングによると、カンボジア人の消費者心理への影響は限定的で、一時様子見をしていた層からも徐々に消費が戻ってきているようだ。

高級店は総選挙に伴い客足減少

日本料理を扱う複数の高級店からは、ALPS処理水の影響よりも、カンボジアの総選挙と新政権発足の影響が大きいのではないかとの声も聞かれた。総選挙が行われた7月の前後からカンボジア人の客足が鈍い状態が続いているという。8月22日、38年にわたって政権を率いたフン・セン首相の後継として、長男のフン・マネット新首相が誕生しており(2023年8月24日記事参照)、政府関係者をはじめとする富裕層の間で、高級店での会食を控える動きが見られるようだ。

(藤田ゆか)

(カンボジア)

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