政治的対立に関する世論調査結果を公表
(タイ)
バンコク発
2023年09月04日
タイの国家開発行政研究所(NIDA)は8月27日、タイの政治的対立に関する世論調査の結果を公表した。8月23~25日に電話で実施され、18歳以上の1,310人が回答した。
「これまでに国内の政治的グループのデモに参加したことがあるか」との質問に、「参加したことはない」は87.63%で最も多かった。次いで、「反独裁民主戦線(UDD:赤シャツ派、注1)のデモに参加したことがある」4.35%、「民主市民連合(PAD:黄シャツ派、注2)のデモに参加したことがある」3.13%、「人民民主改革委員会(PDRC、注3)のデモに参加したことがある」3.05%、「反軍事政権派のデモに参加したことがある」2.82%となった。多くの国民は政治デモに参加した経験がなく、参加したことがある場合も、所属グループ間の差は僅差だった。
また、現在賛同している政治的グループについては、「どのグループにも賛同していない」69.47%、「反軍事政権派」19.85%、「UDD:赤シャツ派」6.64%、「PAD:黄シャツ派」2.59%、「PDRC」1.45%で、賛同するグループのない場合を除けば「反軍事政権派」に賛同する回答者が多かった。
「セター・タビシン新首相とタイ貢献党の率いる与野党の連立政権がこれまでの黄シャツ派、赤シャツ派、PDRCの政治的対立を解決することができると思うか」との質問には、「全くそう思わない」36.72%、「ややそう思わない」20.53%だった。合わせて約6割の回答者が、新たな連立政権はこれまで続いた政治対立を解決できないと思っていることになる。なお、「かなりそう思う」は20.61%、「ややそう思う」は19.85%で、「無回答」もしくは「関心がない」は2.29%だった。
2006年の軍事クーデターで政権を追われたタクシン・チナワット元首相が8月22日、15年ぶりに帰国した。今回の調査では、「タクシン氏の帰国が黄シャツ派、赤シャツ派、PDRCの政治的対立の解決につながるか」との質問に、「全くそう思わない」は30.76%、「ややそう思わない」は18.25%だった。一方、「かなりそう思う」27.02%、「ややそう思う」22.9%、「無回答」もしくは「関心がない」1.68%だった。タクシン氏の帰国については、肯定的な意見と否定的な声が約半分に分かれている。
今後も対立が続くと思う政治グループについての質問には、「反軍事政権派と他の政治グループ(赤シャツ、黄シャツ、PDRC)」が39.39%と最も多かった。「政治グループ間の政治的対立はなくなる」が24.89%と、これまで続いた政治対立の解消を期待する声も一定割合聞かれた。
(注1)2006年にタクシン・チワナット首相(当時)が軍事クーデターで国外追放されたのを機に結成されたタクシン派の団体。
(注2)2006年に反タクシン派が結成した団体。
(注3)2013年にタクシン元首相の妹のインラック・シナワット政権への反対を掲げ、国王を元首とした完全な民主主義改革を目指して結成された団体。
(ピンラウィー・シリサップ、藤田豊)
(タイ)
ビジネス短信 7cdae31db06b9b7e