欧州中小企業連合会、フォン・デア・ライエン委員長に「有言実行」を求める
(EU)
ブリュッセル発
2023年09月27日
欧州中小企業連合会(SMEunited)は9月18日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が9月13日の一般教書演説(2023年9月14日記事参照)で中小企業支援政策を提示したことを評価する声明を発表した(プレスリリース)。同演説では<委員長直属の「EU中小企業担当官」の新設や企業の報告義務の削減に向けた法案の策定などが発表された。SMEunitedのペトリ・サルミネン会頭は「競争力はビジネス環境の改善によって高められるべきであり、補助金の増額だけでは実現しない」と強調し、公正な競争の実現は、中小企業にとって資金面での不安解消の前提条件であるインフレの緩和にもつながるとした。フォン・デア・ライエン委員長の任期が残り1年となる中、欧州グリーン・ディール関連法案の成立・実施やEU域内産業支援の継続に重点を置き、域外の高度人材も含め必要な人材確保を目指すとしたことも評価し、「有言実行」を求めた。
サルミネン会頭は、9月12日に発表された中小企業支援パッケージ(2023年9月27日記事参照)への支持もあらためて示した。SMEunitedは9月12日付声明で、同パッケージは(1)中小企業の投資拡大、(2)規制に伴う企業負担の軽減、(3)雇用のミスマッチの解消につながると歓迎した(プレスリリース)。(1)については、支払い遅延防止規則案の「30日以内」という支払期日の厳格化によって、企業の投資資金を確保できると評価。ただし、加盟国により厳しい独自ルールの導入を認め、部門ごとに協定で定める可能性を与えるべきとした。(2)については、法整備にあたり、中小企業への適用猶予期間や指針を定めることや、中小企業への影響に特に注意するべきだとした。欧州委が企業の報告義務を削減する方針を示したのを受け、関連法案の発表を注視するとし、特に持続可能性関連の報告義務の明確化とフォン・デア・ライエン委員長の任期中の採択を要請した。中小企業向け本社税制(HOT)指令案についても企業負担の大幅な軽減になると採択への期待を示した。
(3)に関しては、欧州委の今後の提案内容に期待すると同時に、技能訓練の実施や中小企業支援に関わる人材の育成に中小企業で組織する団体も参画するべきだと述べた。
なお、EUでは中小企業を「年間売上高が5,000万ユーロ以下または資産が4,300万ユーロ以下で、従業員が250人以下の企業」と定義している。だが、企業成長を遂げ、この定義には当てはまらなくなったが、規模は比較的小さい企業(ミッドキャップ企業)が増えているため、欧州委は2023年末までに定義を見直すとしている。SMEunitedは、中小企業とミッドキャップ企業はそれぞれ個別に定義し、支援策などを実施すべきだとし、欧州委に対して慎重な判断を求めた。
(滝澤祥子)
(EU)
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