米バッテリーリサイクルのアセンド・エレメンツ、正極材の生産へ4億6,000万ドル調達

(米国、シンガポール、カタール)

ニューヨーク発

2023年09月08日

電気自動車(EV)用バッテリー材のリサイクル企業のアセンド・エレメンツ(本社:米国マサチューセッツ州ウェストボロー)は9月6日、シリーズD(注1)の投資ラウンドで4億6,000万ドルを調達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社は2023年に入り、別途8,200万ドルを調達済みだ。2022年10月にはインフラ投資雇用法(IIJA)の下で、エネルギー省から4億8,000万ドルの助成金を受けることも決まっている。今回の投資ラウンドは、シンガポールの政府系投資機関のテマセクと、カタールの同じく政府系投資機関のカタール投資庁が主導した。その他、アライアンス・リソース・パートナーズや日立ベンチャーなどが投資に加わった。

今回調達した資金は、同社が現在ケンタッキー州ホプキンズビルに建設中の生産施設に充てられる。同施設ではEVバッテリーのリサイクルにより得たブラックマス(注2)から、正極前駆体と正極活物質を製造する予定だ。完成すれば年間75万台のEVに供給可能な前駆体の生産が可能になるという。同社は「Hydro-to-Cathode外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と呼ばれる工法(注3)で特許を取得しており、従来の製法に比べて効率的でクリーンに製造できることをアピールしている。

アセンド・エレメンツは2015年にマサチューセッツ州で設立。2022年8月にジョージア州の生産拠点の稼働を開始した。同年9月には韓国のSKバッテリーアメリカ(SKBA)、2023年2月にはホンダとリサイクル契約を締結している(2023年6月14日記事参照)。アセンド・エレメンツのマイク・オークロンリー最高経営責任者(CEO)は「われわれは、世界的なエネルギーの転換に必要な、持続可能な米国内のEVサプライチェーンを開発するために、新規および既存のパートナーからの支援を受けて、さらに勢いを強めていくことを楽しみにしている」と事業拡張に意欲を示した。

(注1)スタートアップ、ベンチャー企業に対する投資ラウンドのうち、収益が安定的で、IPO(新規株式公開)やM&Aなどイグジットを検討する段階。

(注2)リチウムバッテリーを放電・乾燥・破砕・選別した後に得られる原料の濃縮かすのこと。

(注3)バッテリーリサイクルで、ブラックマスからの不純物除去過程とリチウム、ニッケル、コバルトの成分回収過程を効率化し、直接正極前駆体を生成する工法のこと。

(大原典子)

(米国、シンガポール、カタール)

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