シャンムガラトナム前上級相、第9代大統領へ、7割の得票率で圧勝

(シンガポール)

シンガポール発

2023年09月05日

シンガポールで9月1日、大統領選挙の投票が実施された。即日開票の結果、ターマン・シャンムガラトナム前上級相兼経済政策調整相(66歳)が、有効票(248万760票)の70.4%の得票数を獲得して、第9代大統領への就任が決まった。シャンムガラトナム氏は9月14日に大統領に正式就任する。

同前上級相は今回、政府系投資会社GICの元最高投資責任者(CIO)のウン・コックソン氏(得票率:15.7%)と、2011年の大統領選挙にも立候補した労組系保険会社NTUCインカムの元最高経営責任者(CEO)のタン・キンリアン氏(同13.9%)の両対立候補を大きく引き離し、圧勝した。

シャンムガラトナム氏は今回の選挙で、これまでの国内外での実績や経験を訴え、当選した。同氏はシンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)の長官を経て、2001年に政界入りした。教育相、財務相など歴任後、2011年に副首相に就任。2019年5月からは上級相に就任していた。2020年7月の国会総選挙では、1つの選挙区で政党ごとに複数人の候補者がまとまって立候補するグループ選挙区で、同氏の率いるグループ議員が74.6%の高い得票率を獲得するなど、国民の間で人気の高い与党・人民行動党(PAP)出身の政治家だ。また、同氏はIMFの国際通貨金融委員長を務めるなど、国際機関でも要職を歴任し、海外での知名度も高い。同氏は大統領選挙への立候補のため2023年7月にPAPを離党し、全ての政治要職からの辞任を表明していた。

同国の大統領は国家元首としての象徴的な存在で、外交儀礼などの儀礼的な役割を担う。ただ、過去の政権が積み立てた政府準備基金の引き出しや、最高裁判事など政府機関幹部の任命に対する拒否権を保有するなど、時の政権に対するチェック機能も一部持つ。大統領候補となるには、45歳以上(推薦日時点)の国民で、閣僚や国会議長、裁判所判事など政府要職や政府系投資会社のCEOとして3年以上の在職期間があることが必要。または、民間企業の場合にはCEOに就任していた直近の3年間の株主資本が平均で5億シンガポール・ドル(約540億円、Sドル、1Sドル=約108円)以上などの要件を満たし、大統領選挙委員会(PEC)の候補者資格審査で承認される必要がある。今回の大統領選挙では、6人が大統領施策審査に申請し、シャンムガラトナム前上級相を含む3人の立候補資格が認められていた。

(本田智津絵)

(シンガポール)

ビジネス短信 4545734116ae10a1