2023年のスロベニアの実質GDP成長率予測を1.6%に下方修正、2024年から回復基調に
(スロベニア)
ウィーン発
2023年09月26日
スロベニア国営のマクロ経済分析開発研究所(IMAD)は9月13日、秋季経済予測を発表した(添付資料表参照)。2023年の実質GDP成長率を1.6%と予測し、春季予測(3月)より0.2ポイント下方修正した。原因は、ドイツをはじめとする主な貿易相手国の経済成長の減速、個人消費支出の停滞、製造業と建設業の生産後退とみられる。2023年8月に起きた破壊的な洪水による被害は地域ごとに深刻度は異なったが、製造業企業と運輸への直接的影響は一時的で、中期的には再建のための政府支出拡大は成長の下支えにもなり得る。外需の回復を前提に、2024年と2025年の実質GDP成長率はそれぞれ2.8%と2.5%で、2023年のレベルを緩やかに上回る見通しだ。2024年には、災害復旧のための建設・設備投資の増加をきっかけに、国内総固定資本形成は5.5%と堅調に拡大するほか、個人消費支出も大幅な賃金上昇を追い風に、2.3%に拡大するとみられる。
労働市場はかなり逼迫している。人口の高齢化が進み、2012年以降、20~64歳の労働人口が著しく低下し、人手不足が深刻だ。失業率は予測期間内(2023~2025年)に5.0%から4.5%に下がる見通しだ。政府は非EU加盟国からの労働者の雇用を促進させようとしているが、人手不足緩和への影響は少ないとみられる。人手不足と高インフレは賃金上昇の原因にもつながり得る。2023年の名目賃金上昇率は8.6%と特に高いが、前述のとおり、状況が大幅に改善される可能性は低いため、今後も比較的高い上昇率(2024年:5.6%、2025年:5.5%)が予測される。IMADは、輸出依存度の高いスロベニアの競争力を弱める恐れがあると指摘している。
2022年に8.8%となった消費者物価上昇率は、2023年に緩やかに低下しているが、通年で7.6%の予測と高いままだ。サービスと食品の価格上昇は収まっているが、インフレへの貢献は依然として高い。エネルギー価格の影響も弱まっている。外的ショックがないことを前提に、消費者物価上昇率は2024年に3.9%、2025年に2.7%に下がるとみられる。
(エッカート・デアシュミット)
(スロベニア)
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