上海米国商会がビジネス環境調査を実施、中長期に市場を楽観視する企業は過去最低

(中国、米国)

上海発

2023年09月22日

中国の上海米国商会は9月19日、2023年の中国ビジネスに関する報告書の概要外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。当報告書は、上海米国商会の会員企業(注1)を対象に行われた調査に基づいて作成された。発表によると、新型コロナウイルス感染収束に伴い、2023年は会員企業の収益予想が安定し、前年と比較して対中投資を増やす計画の企業が多い一方、米中関係の悪化や、マクロ経済の悪化により、会員企業は業績悪化や中国市場に対する悲観的な見通しであることを示した。

収益については、2022年において黒字と答えた企業は68%となり、2021年比7ポイント減だった。2023年の収益見通しについて、前年比で増加すると答えた企業は52%にのぼり、業種別では小売業が最も高かった。今後5年間の事業見通しについて、楽観的と答えた企業は52%となり、調査史上最低(注2)となった。

また、対中投資について、2023年に中国への投資を前年比で増加させた企業は31%となり、前年比6ポイント増だった。その理由として最も多かったのは「中国市場の成長可能性」だった。一方、2023年の中国への投資を前年比で減少させた企業は22%となり、その理由として最も多かったのは「米中の貿易関係の不確実性」、次いで「中国の成長鈍化」となった。

当初中国向けに計画していた投資を他国へと移す、もしくは移す予定とした企業の割合は40%となり、前年比6ポイント増だった。今後1~3年で、現在の事業の一部を中国国外に移転を検討していると答えた企業は19%となり、主な理由は「米中関係の不確実性」が挙げられた。

発表では、地政学的環境を改善するためには、透明性と予測可能性の確保が重要だと指摘している。回答企業の約3分の1は、外国企業に対する政策や規制が過去1年間で悪化したと回答した。回答企業のうち70%が、データローカリゼーション(国内のデータ保存)やサイバーセキュリティー関連の要求がビジネスの妨げになっていると答えた。また、回答企業の約3分の2がデカップリングの圧力に直面していると答えた。その大半は、中国政府の政策よりも米国政府の政策を問題視しているという。

上海米国商会の張総裁は「中国のビジネス環境の悪化には、2022年の新型コロナウイルス感染拡大関連の混乱と米中対立が影響している」「課題がある一方、会員企業にとって中国は重要な市場で、潜在的なリスクを軽減しながら相互に有益なビジネスチャンスを追求すべきだ」と述べた。

(注1)当調査では、1000社以上の上海米国商会会員のうち、325社が回答した。

(注2)同報告書は1999年以降、毎年作成されている。

(神野可奈子)

(中国、米国)

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