人民銀行、期間1年のローンプライムレートを引き下げ
(中国)
北京発
2023年08月22日
中国人民銀行(中央銀行)は8月21日、最優遇貸出金利の指標のローンプライムレート(LPR)の期間1年を3.55%から3.45%に0.10ポイント引き下げると発表した。期間5年以上は4.20%のまま据え置きとなった。期間1年を前回引き下げたのは6月20日(2023年6月20日記事参照)で、継続して景気刺激策を実施している(LPR推移は添付資料図1参照)。中国人民銀行は8月15日にMLF(注1)の期間1年を2.65%から2.50%に0.15ポイント引き下げており、今回のLPR引き下げにつながったとみられる。
中国人民銀行が8月11日に発表した7月の金融統計では、7月末の人民元・外貨を合わせた貸出残高は235兆9,200億元(約4,718兆4,000億円、1元=約20円)で、前年同月末比10.5%増だった。うち人民元貸出残高は230兆9,200億元で同11.1%増、外貨貸出残高は7,015億ドルで同18.6%減だった。人民元貸出残高は一貫して増加傾向にあるが、増加額は7月単月で3,459億元と、5月単月の1兆3,600億元や6月単月の3兆500億元から減少している。例年7月は貸し出しの伸びが落ち着く時期だが、2021年7月の増加額1兆800億元や2022年7月の同6,790億元と比較しても規模が小さい。なお、外貨貸出残高は2023年1月末と3月末を除き、2022年3月末以降減少が続いている。
中国人民銀行が四半期ごとに銀行に対して実施しているアンケート調査(注2)でも、資金需要の失速がみてとれる。6月29日発表の2023年第2四半期(4~6月)銀行アンケート調査では、総合融資需要指数は62.2%と、第1四半期(1~3月)対比で16.2ポイント低下した(添付資料図2参照)。
中国国際経済交流センターの王一鳴副理事長は、政策金利の引き下げやその他有効な政策が打ち出されたことで資金調達コストが低下し、実体経済の発展を支えることができたと解説している(「新華網」8月21日)。中国国務院は7月28日に消費の回復・拡大に関し、内需発展に向け20項目の措置を発表している(2023年8月2日記事参照)。
(注1)MLFは、中期貸出ファシリティー(Medium Term Lending Facility)を指す。中国人民銀行が資金供給を行うための金融政策手段の1つ。MLFはLPRを算出する指針となる。前回はMLFを6月15日に引き下げ、同月20日にLPRを引き下げていた。
(注2)中国人民銀行が2004年に開始した四半期ごとのアンケート調査。総合調査とサンプル調査を組み合わせ、全国約3,200行の銀行が対象となっている。総合融資需要指数は資金需要が「拡大している」と「横ばい」の回答に対し、それぞれ1.0、0.5をかけてDI値(Diffusion Index)を算出している。
(亀山達也)
(中国)
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