エネルギー移行ロードマップ第1弾、10の重要プロジェクトを特定

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年08月01日

マレーシア経済省は7月27日、2050年までの脱炭素化に向けた道筋を示す「エネルギー転換ロードマップ(NETR)」の第1弾PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(経済省プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。ロードマップ第1弾では、250億リンギ(約7,750億円、1リンギ=約31円)相当の主力プロジェクトを特定し、年間1,000万トンの二酸化炭素(CO2)排出削減を目指す。今後数週間以内に発表予定の第2弾では、分野ごとの具体的目標や支援策など、脱炭素化達成を下支えるための包括的な行動計画を盛り込むという。

ロードマップ第1弾は、民間セクターと共同で推進する環境関連事業として、以下の6分野10基幹プロジェクトを、主導する省庁・企業名とともに記載。プロジェクト推進により、2万3,000人の高品質雇用が創出される、と経済省は推計する。

  1. エネルギー効率:(使用エネルギーの)効率的な切り替え
  2. 再生可能エネルギー(以下、再エネ):再エネゾーン、エネルギー貯留、エネルギー確保
  3. 水素:グリーン水素、水素発電
  4. バイオエネルギー:バイオマス需要創出
  5. グリーンモビリティー:次世代モビリティー、次世代燃料
  6. 二酸化炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS):二酸化炭素の回収・貯留(CCS)

上記プロジェクトにより、関連分まで含めた2050年までの投資額は4,350億~1兆8,500億リンギに上る可能性があると、ラフィジ・ラムリ経済相は説明。具体的には、2.再エネ分野では、政府系投資会社カザナ・ナショナルなどによる、ハイブリッド型太陽光発電施設を中心とした再エネ(RE)ゾーン開発や、政府系電力会社テナガ・ナショナルによる水力発電用ダムへの浮体式太陽光発電設備設置などが挙げられた。また、3.水素分野では、サラワク州のグリーン水素ハブとしての確立、5.グリーンモビリティー分野では、2025年までに電気自動車(EV)用充電施設を高速道路や商業施設に1万カ所以上設置するプロジェクトなどが、それぞれ明記されている。

マレーシア政府は5月に、再エネ比率を2050年までに70%に引き上げるとする「再生可能エネルギー戦略開発ロードマップ」を発表済みで(2023年5月15日記事参照)、NETRもこれと連携させる。なお政府は、NETRを補完する「水素経済・技術ロードマップ(HETR)」も2023年内に発表するとしている。NETRおよびHETRはいずれも、「国家エネルギー政策2020-2040」(2022年9月27日記事参照)に沿って策定される。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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