ALPS処理水放出、ハンガリー国内の反応は極めて冷静

(ハンガリー、日本)

ブダペスト発

2023年08月31日

福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出が始まった8月24日以降、ハンガリーでも、海洋放出に関して複数のメディアで報道されているが、その大半は、放出を始めた背景(「24.hu」8月25日)や、国際原子力機関(IAEA)から国際安全基準に合致していて人体や環境に影響は無視できるレベルとのお墨付きを得ていること(「ポートフォリオ」8月24日、「ユーロニュース」8月24日)、日本の近隣国では遺憾の意が表明されていること(「444.hu」8月24日、「ユーロニュース」8月25日など)など、事実を伝える内容にとどまっている。また、海洋放出を始めたことについて、ハンガリー政府関係者による発言も特にはなく、何らかの輸入制限措置の導入や通関時の検査体制を強化させることも報じられていない。

この件について、ジェトロはハンガリー政府機関に問い合わせを行ったが、特段の対応などの検討がされているかどうかについて、そういう認識はないとの回答だった。

また、8月28日に放送された地元テレビ番組でも、安全保障が専門の元駐NATO大使が「処理水自体が放射能を有したものではないし、国際機関から人体や環境に影響を及ぼすレベルではないことが確認されている。全く憂慮するものではない」と発言している。8月27日に放送されたラジオ番組も、日本語や東アジアの安全保障・防衛政策が専門の大学講師が「放射性物質を含む水ではないことをしっかりと認識するべきだ。適切な処理を行った上で人体や環境に影響がない状態にしたものが放出されているので、気にする問題ではない」と解説している。

今回の報道を受けて市民の反応を確認するべく、ジェトロは数軒のすしレストランに確認を行ったが、特に客から何か問われたこともなければ、海洋放出を受けてのキャンセルも発生していないとのことだった。また、日本食材を取り扱う業者も同様に、客先から憂慮を表明されていないという。

(バラジ・ラウラ、末廣徹)

(ハンガリー、日本)

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