英政府、国際基準に準拠したサステナビリティ開示基準策定の枠組みを発表

(英国)

調査部欧州課

2023年08月14日

英国政府は8月2日、国際会計基準(IFRS)財団傘下の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が定める国際基準に準拠した英国サステナビリティ開示基準(UK-SDS)策定に向けた枠組みを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。UK-SDSは、企業のサステナビリティに関するリスクと機会の開示を規定して、将来的な同国内のサステナビリティ開示に関する法規制の基礎になるとされ、2024年7月までの策定を目指す。国際基準に基づく比較可能なサステナビリティ関連情報の開示により、投資家の投資判断を支援し、効率的な資源配分や英国資本市場の円滑化を促すとしている。

同枠組みは、2023年3月発表の「2023年グリーンファイナンス戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の中で、ISSBによるIFRSサステナビリティ開示基準の公表後の策定を予定していた(2023年4月10日記事参照)。6月26日に、ISSBが全般的な要求事項の「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項(IFRS S1)」とテーマ別要求事項の「気候関連開示(IFRS S2)」(注)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたことを受けて策定に至った。

今後、IFRS S1、S2の評価と採択要否についてビジネス・通商相による承認手続きが行われ、2024年7月までにこれら基準に対応したUK-SDSが策定される予定。その後、UK-SDSは英国企業に対する要求事項として国内の法規制に反映される可能性があり、上場企業は金融行為規制機構(FCA)が、国内登記企業や有限責任パートナーシップなどは英国政府がそれぞれ対応する。

併せて、政府はISSB基準の評価・承認手続きとUK-SDS策定にあたり、以下の2つの委員会を設置した。

  • 英国サステナビリティ開示技術諮問委員会(TAC):有識者で構成され、財務報告評議会(FRC)が運営する。ISSBの基準を技術的に評価し、ビジネス・通商省(DBT)を通じて、承認に関して独立した提言を行う。
  • サステナビリティ開示政策実施委員会(PIC):関係省庁や規制機関で構成され、DBTが管理・監督する。承認に関し、TACとPICの分析をもとに、ISSB基準と既存法規制の整合性などについて助言を行う。承認手続き完了後は、政府とFCAによるUK-SDS導入の調整を行う。

また、TACは7月19日から10月11日までIFRS S1、S2の英国への適合性に関する意見公募を行っている。ISSB基準に基づく開示が、投資家に理解しやすく適切で比較可能なものか、技術的に可能か、一般的な決算書と同時に適宜準備可能か、コストに見合う利益を生むかという点から意見を募集している。

(注)ジェトロ世界貿易投資報告 2023年版第IV章 第1節 持続可能な社会に向け進展するルール形成と主要国・地域の政策PDFファイル(2.1MB)も参照。

(奈良陽一)

(英国)

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