太平洋島しょ国の社会課題解決、日系企業が取り組み状況発表

(太平洋島しょ国、日本)

調査部アジア大洋州課

2023年08月08日

日本の経済産業省は7月28日、太平洋島しょ国(注1)の社会課題解決型ビジネス展開支援イベントを東京都内で開催した。

西村康稔経済産業相は開会あいさつで「自由で開かれたインド太平洋」(Free and Open Indo-Pacific, FOIP)について、「今般の国際秩序を揺るがす世界情勢は、太平洋を生きるわれわれの生活にも大きな影響を及ぼしている。そうした中、新たな平和と繁栄のため国際秩序を築いていく必要があり、その礎となるのは、多様性や包摂性を尊重する自由で開かれたインド太平洋、FOIPの考え方だ」と伝え、その理念の具体的な実現に向けて今回のイベントが大きな一歩となることを願うと述べた。島しょ国が直面している社会課題にも言及し、エネルギー制約、気候変動問題、災害、ヘルスケアを例に挙げ、社会解決のニーズがあり、イノベーション、ビジネスチャンスが存在すると発言した。

企業による島しょ国社会解決型ビジネス展開事例として、3社が登壇した。ブロックチェーン技術を用いてソリューションを提供するソラミツは、中央銀行デジタル通貨を島しょ国に提供することを検証しており、経済産業省や内閣官房の支援の下、金融インフラ調査を行ったことを発表した。ソロモン諸島にカンボジアでの導入事例(中央銀行デジタル通貨「バコン」)を説明したところ、同国中銀幹部によるカンボジア視察が行われ、2023年秋ごろに実証実験を行う予定という。島しょ国、アジア大洋州国のクロスボーダー決裁を目指すと述べた。

太陽光発電による充電設備を手がけるT-PLANは大分県姫島村で、二酸化炭素(CO2)排出ゼロの交通手段を観光業にも応用している。この「姫島モデル」を活用したパラオ進出の事例を解説した。

半導体や電子機器、モノのインターネット(IoT)などの分野で事業展開しているマクニカはフィジーでの分散型発電・電⼒制御など、効果的なエネルギーマネジメント事例を紹介した。

今後、経済産業省は2024年1月に島しょ国で、現地のニーズと、同地域でのビジネス展開に興味のある日本企業をつなぐビジネスマッチングイベントを開催する予定だ(注2)。

また「令和4年度補正インド太平洋地域ビジネス共創促進事業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で日本のスタートアップなどに対し、島しょ国の社会課題解決ビジネスの展開に向けた実証事業などにかかる費用を支援している。

(注1)太平洋島しょ国とは、メラネシア・ポリネシア・ミクロネシア地域にあるパプアニューギニア、サモア、パラオなどをはじめとする国々を指す

(注2)2024年フィジーでの開催を想定

(小山千紗子)

(太平洋島しょ国、日本)

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