メキシコ政府、遺伝子組み換えトウモロコシ使用規制巡る紛争解決パネル受領、同国の立場説明へ

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2023年08月21日

メキシコ経済省は8月17日、同国の遺伝子組み換えトウモロコシの使用を制限する規制について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)第31章に基づく紛争解決パネル設置要請(2023年8月18日記事参照)を米国通商代表部(USTR)から正式に受領したと発表した(経済省プレスリリース8月17日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。経済省は同パネルに対し、メキシコの立場を擁護する準備ができているとし、(1)メキシコの国内規制はUSMCAに整合的なこと、(2)米国が問題視する措置は両国間の貿易に悪影響を与えていないことを証明するとの対処方針を明らかにした。さらに「USMCAの利点は、貿易パートナーの間の紛争解決に明確なルールを定めており、全ての関係者に信頼感を与えることだ。経済省はUSMCAに盛り込まれた約束を順守し、法に従って国家の利益を代表する姿勢を繰り返し表明する」と強調している。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は8月18日の記者会見で、今回の紛争解決パネルの設置について「これはメキシコだけの問題ではなく、米国や世界中の消費者を助けることになるため、非常に重要だ。遺伝子組み換えトウモロコシの利用を見直す良い機会であり、われわれは健康第一で、メキシコ国民の食糧としての利用を許可しないつもりだ」と強調した(大統領府8月18日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また「米国の一部企業が政治家に対して資金提供を行い、圧力をかけている」とも発言した。

識者はパネル敗訴の可能性指摘

一方で、フアン・カルロス・ベイカー元通商担当次官は「メキシコ政府が主張してきたことには科学的根拠がなく、パネルの基準ではメキシコが勝つのは非常に難しい」と述べた。また、メキシコ農牧業評議会(CAN)のフランシスコ・チャパ・ゴンゴラ氏は「メキシコがパネルで勝利する可能性は限りなく低い」とし、「もしパネルで米国側に有利な判決が出て、メキシコ政府が判決に従わなかった場合、米国はメキシコにとって最も損害が出る自動車やその他製造業に対する報復関税を課す可能性がある」と、他分野への影響を懸念した(「レフォルマ」紙8月18日)。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国、カナダ)

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