米シカゴ市、車両への盗難防止装置の無搭載で韓国自動車メーカーを提訴

(米国、韓国)

シカゴ発

2023年08月30日

米国シカゴのブランドン・ジョンソン市長(民主党)は8月24日、同市が韓国自動車メーカーの起亜と現代自動車(注1)を提訴したと発表した。両メーカーが複数の車種に盗難防止装置であるエンジンイモビライザーを搭載しなかった結果、同市内で車両盗難、無謀運転、物的損害、関連するさまざまな暴力的な犯罪が急増したことを理由としている。

クック郡の巡回裁判所に提出された訴状では、「起亜と現代自動車以外のほぼ全ての自動車メーカーは10年以上前に盗難防止装置を標準装備している」、また、「両メーカーは米国以外での販売車には盗難防止装置を搭載しているが、2011年から2022年に販売した米国車には搭載しなかった」とした。

さらに、「起亜と現代自動車はこれらの車に『先進的な』安全機能が備わっていると消費者を欺いた」と述べている。同市は訴状の中で、「両メーカーの行為が市の消費者保護法に違反し、公衆に迷惑をかけている」とした。そして、同市は「盗難対応で市が負担した費用の支払い、被害車両所有者への賠償金の支払い、被害車両の安全性欠陥の修理を強制」することを目指すとしている。

ソーシャルメディアのユーザーが起亜と現代自動車の車両の安全性の欠陥を暴露した後、全米でその盗難が急増し、窃盗をライブ配信する「起亜チャレンジ」と呼ばれるものが巻き起こった(オートモーティブニュース8月25日)。市の発表によると、この欠陥が暴露されて以来、シカゴでの起亜と現代自動車の車両盗難件数は、2022年上半期の約500件から下半期には8,350件以上に急増し、2023年はシカゴでの盗難車両件数の半数以上を占めているという。

両メーカーは、今回の訴訟以前にも、車両が盗難に対して脆弱(ぜいじゃく)であることが問題と集団訴訟を起こされており、2023年5月に約2億ドル相当の和解金で合意している(注2)。なお、2021年11月以降に生産された全ての現代自動車の自動車に、エンジンイモビライザーは標準装備されているとのことだ(オートモーティブニュース8月25日)。

(注1)シカゴ市は両メーカーのそれぞれ韓国本社と米国法人を起訴している。

(注2)和解の内容は、保険でカバーされない盗難関連の車両損失や損害が発生した顧客への現金補償、および、保険免責金額、保険料増加分、その他の盗難関連損失の払い戻しを求めている。この集団訴訟では起亜、現代自動車の車両約900万台が対象となっている。

(星野香織)

(米国、韓国)

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