アルゼンチン、BRICSへの加盟に野党大統領候補はいずれも否定的見解

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年08月30日

南アフリカ共和国で824日に開催されたBRICS首脳会議においてアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国がBRICSに新規加盟することが発表された。アルベルト・フェルナンデス大統領はアルゼンチンのBRICS新規加盟を祝福したが、1210日に発足する新政権を担う可能性のある野党候補らは、いずれもBRICSへの加盟に否定的な見解を示した。

フェルナンデス大統領は824日、BRICS加盟国が増えることで、開発途上国の声を国際シナリオに反映させる新たなプラットフォームが誕生すると述べて、アルゼンチンのBRICSへの加盟を歓迎した。

同日に米州協会/米州協議会とアルゼンチンサービス商業会議所(CAC)がブエノスアイレス市で開催したシンポジウムには、野党連合「変革のために共に(JxC)」の大統領候補パトリシア・ブルリッチ氏と、野党「自由前進(LLA)」の自由至上主義の大統領候補ハビエル・ミレイ氏、与党連合「祖国のための同盟(UP)」のセルヒオ・マッサ候補(現経済相)が講演し、BRICSや中国やブラジルとの関係に触れた。

ブルリッチ氏は「フェルナンデス大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻が続いている最中に、しかも、アルゼンチンに対して反ユダヤ主義的なテロ攻撃(注)を仕掛けたイランとともに、アルゼンチンをBRICSに加盟させることを約束した。われわれの政権においてアルゼンチンはBRICSには加盟しない」と述べ、アルゼンチンのBRICS加盟に明確に反対した。

ミレイ氏は同シンポジウムでの講演において、BRICSへの加盟そのものについて明言しなかったが、「われわれの地政学的な同盟国は米国とイスラエルであり、共産主義者とは手を組まない」と述べた。また、824日付け現地紙「エル・クロニスタ」(電子版)によると、ミレイ氏が1022日の大統領選挙で勝利した場合に同氏の政権で外相に就任すると目されるLLAのディアナ・モンディノ下院議員候補は、アルゼンチンにとってBRICSへの加盟拠出金の負担は重いこと、アルゼンチンがこれまでに市場参入や輸出促進を試みたことすらない国々が世界の秩序を修正することを目的としていることに疑問を呈したとされる。

一方、マッサ氏は「ブラジル、中国、インドと関係を決裂して、誰に自国の産品を売るつもりなのか」と述べ、ブルリッチ氏とミレイ氏の発言を批判し、政府の立場を擁護した。

アルゼンチンのBRICSへの加盟は、大統領選挙の結果に左右されることになりそうだ。

写真 シンポジウムで講演するJxCのパトリシア・ブルリッチ候補(ジェトロ撮影)

シンポジウムで講演するJxCのパトリシア・ブルリッチ候補(ジェトロ撮影)

(注)1990年代にブエノスアイレス市で発生した一連のイスラエル関連施設へのテロ攻撃を指すとみられる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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