フィッチ、ブラジル格付けを引き上げ、財政・税制改革努力を評価

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年08月07日

米国格付け大手のフィッチ・レーティングス(フィッチ)は7月26日、ブラジル長期国債の格付けを「BBマイナス」から「BB」に引き上げた(注1)。見通しは「安定的」としている。「BB」の格付けは投資適格に該当するBBBマイナスの2段階下だが、ブラジル長期債が「BB」に格付けされたのは約5年ぶりとなる。

フィッチは格付け引き上げの主な原因として、ルーラ政権による連邦議会への財政均衡策案と税制改革案の提出(2023年4月12日、2023年7月4日記事参照)を挙げている。また、フィッチは「ルーラ大統領は前政権のリベラルな経済政策からの脱却を唱えるが、介入主義よりも、左派の思考に左右されないプラグマティックなアプローチをとるだろう」と予測している。

格付け大手のスタンダード&プアーズ(S&P)も6月14日、ブラジル長期国債格付けを発表し、「BBマイナス」に控え置きながら、見通しを「安定」から「ポジティブ」に引き上げた。S&Pも財政均衡策案の提出を評価し、ルーラ政権のプラグマティズムや税制改革への期待を表明した。

フィッチ米州ソブリン格付け部門のトッド・マルティネス共同総括責任者は7月30日付現地紙「エスタード」のインタビューで、「われわれから見ると、ブラジルは現時点で明確に投資適格級を取り戻す道にいるとは限らない。ただし、ルーラ政権がより高い格付けに導ける課題に取り組んでいることは認める」と説明した(注2)。マルティネス氏はまた、「今後、財政政策および税制改革の進展に目を向けることが重要だが、法案の可決や公布のみならず、これらの措置が、本当に財政再建や経済成長に貢献するかを確かめる必要がある。このようなシナリオが実現すれば、ブラジル格付けのさらなる引き上げについて考えることが可能になる」と述べた。

(注1)7月26日付公式リリースでの発表。フィッチは2008年5月にブラジル長期国債格付けを、初めて投資適格級の「BBBマイナス」に引き上げた。2011年4月に「BBB」に引き上げ、2015年10月に再び「BBBマイナス」に引き下げた。2015年12月には「BBプラス」に、2016年5月に「BB」、そして2018年2月に「BBマイナス」に引き下げ、今回の発表までそのまま控え置いた。

(注2)「エスタード」の記事は、7月30日付現地紙「イスト・エー」に掲載されているもの。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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