米商務省、中国・ドイツ・カナダからの缶詰用鋼材輸入にAD税を仮決定

(米国、中国、ドイツ、カナダ)

ニューヨーク発

2023年08月21日

米国商務省国際貿易局(ITA)は8月17日、中国、ドイツ、カナダ3カ国からのスズめっき製品の輸入に対して、アンチダンピング(AD)税を賦課する仮決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。

関税分類番号(HTSコード)10桁で7210.11.0000、7210.12.0000、7210.50.0020、 7210.50.0090、7210.50.0000、7212.10.0000、7212.50.0000、7225.99.0090、7226.99.0180に該当する製品が対象となり、中国からの輸入には122.52%(注1)、ドイツからは7.02%、カナダからは5.29%のAD税が課されることになる。AD確定までの流れは、(1)国際貿易委員会(ITC)による仮決定、(2)商務省による仮決定、(3)商務省による最終決定、(4)ITCによる最終決定の4段階となっており、今回は(2)の仮決定が行われたにとどまる(注2)。ただし、この段階での「ダンピングあり」とのクロ判定をもって商務省は、仮決定の官報公示と同時に税関・国境警備局(CBP)に対してAD税の徴収開始を指示することになっている。今後、(3)か(4)で「ダンピングなし」とのシロ判定がなされない限り、AD税の賦課は継続することになる(注3)。商務省高官によると、2022年の輸入統計をベースとした場合、今回の仮決定によって、米国のスズめっき製品輸入の8割が7.02%かそれ以下のADの対象になる(米通商専門誌「インサイドUSトレード」8月17日)。

AD対象となったスズめっき製品は主に缶詰の製造に使用されており、米国内の競合メーカーのクリーブランドクリフ(本社:オハイオ州)と関連業界の労働組合がAD調査の申請を行った。調査は2月に開始され、対象の輸出国・地域にはADが仮決定された3カ国以外で韓国、オランダ、台湾、トルコ、英国も含まれていたが、これらの国・地域からはダンピングがなかったとされた。ただし、上述のとおり、(3)商務省による最終決定でクロ判定に変わる可能性も残っている。この件については、ADを支持する鉄鋼メーカーや関連業界団体・労組と、反対する缶詰メーカーや消費者関連団体などで意見が分かれていた。前者では全米鉄鋼労働組合がAD仮決定について「われわれの市場を正常化し、公正な価格を取り戻し、米国の労働者を守るための正しい一歩」との声明を出している。一方、缶詰製造業者協会や消費者ブランド協会などは明確に反対してはいないものの、商務省が上述の5カ国・地域からのダンピングはなしと決定した点を評価するとともに、最終決定段階でドイツとカナダに対するADが撤回されることに期待を示す声明を出している。ただし、中国については反論の余地がないと判断したためか、言及がない。

(注1)中国のみ、同製品群に関して相殺関税(CVD)の調査も進んでおり、6月に宝山鋼鉄股分有限公司からの輸入に542.55%、その他の中国企業からの輸入に89.02%のCVDを賦課する商務省の仮決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが行われている。そのCVDとの調整で実際のAD税率は111.98%となる。

(注2)調査の過程で商務省は当該産品の米国内価格と輸出国内価格を検証する。ITCは米国の当該産業にもたらされた損害を精査する。なお、(2)以外は、各段階で「ダンピングなし」のシロ判定が出た場合、そこで調査終了となる。

(注3)今後(3)は中国のみ10月30日まで、中国以外は2024年1月8日までに決定が行われる予定。そこで引き続き「ダンピングあり」のクロ判定となれば、(4)は中国のみ12月14日まで、中国以外は2024年初期までに決定が行われる予定。

(磯部真一)

(米国、中国、ドイツ、カナダ)

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