ASEAN高級経済実務者会合、インドや中国とのFTA改正に向けて前進

(ASEAN、タイ、インドネシア、インド、韓国、中国、香港、EU、英国、ロシア)

バンコク発

2023年08月15日

タイ商務省貿易交渉局(DTN)は83日、インドネシアのスラバヤで714日から16日にかけて実施されたASEANと対話パートナーの間での高級経済実務者会合(SEOM)の結果を公表した。日本のほか、インド、韓国、中国、香港、EU、英国、ロシアとの間で貿易協定や経済協力に関する議論が実施された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ASEAN・インドでの会議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、ASEANインド物品貿易協定(AITIGA)改正に向け、(1AITIGAの交渉計画・期間、(2AITIGA合同委員会の担当範囲、(3AITIGAの交渉範囲(物品貿易、原産地規則、税関手続き、貿易円滑化、経済協力などの作業部会の設置など)の合意に向け、議論を加速することで合意した。AITIGA改正交渉を正式に開始する前に、当該事項を定めた文書が、8月に開催されるASEANインド経済大臣会合に提案され、承認を得る見込み。

韓国との会合では、ASEAN韓国自由貿易協定(AKFTA)に関する進捗が確認された。AKFTA改正議定書の施行状況(韓国とタイを含む9カ国で批准済み)、品目別規則の関税番号基準の更新(HS2017からHS2022)状況が報告された。また、AKFTA実施委員会に、(1AKFTA高度化に向けた最終共同研究報告書の協議、(2AKFTAの改良にかかる議論、(3)デジタル貿易に関する調査・モニタリングの任務を割り当てる。また、ASEAN・韓国間のスタートアップ政策の立案に向けた作業計画の策定、工業規格や電気用品の安全確保などで協力を進める。

中国とは、2024年までに妥結を目指すASEAN中国FTAACFTA3.0の交渉を加速するとした。同協定では新分野としてグリーン経済、デジタル経済、サプライチェーン連結性が含まれる。また、既存のACFTAの下での貿易障壁、特に農産品・工業製品の貿易にかかる問題のモニタリング・解決の迅速化を図る。また、電子商取引の協力拡大イニシアティブを立ち上げる。

香港とは、ASEAN香港FTAの関税削減対象557品目にかかる品目別規則(PSR)の交渉が完了したことが報告された。8月の経済大臣会合でASEAN香港投資協定(AHKIA)に含まれる自由化分野の実質的な妥結を発表することで合意しつつ、同協定における「自然人」の定義や投資家対国家の紛争解決手続き(ISDS)条項などは交渉を早める。また、AHKFTAの下で経済・学術協力事業の進捗を確認した。タイでは、水産物にかかるコールドチェーンにかかるワークショップを香港の支援で実施した。

欧州委員会との協議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、ASEANEU合同作業部会の下、デジタル経済、環境配慮型技術・サービス、強靭(きょうじん)かつ効率的・サステナブルなサプライチェーンなどに関する議論が行われた。同部会で情報や規制、ベストプラクティスを話し合う。また、EUが支援するASEAN域内でのエネルギーや輸送、サプライチェーン、デジタル、教育などのプロジェクトや、EU-ASEANグリーン・イニシアティブなど気候変動に関する連携の推進、循環型経済への転換に向けた技術支援が協議された。

また、英国との協議では、サプライチェーンや市場開放性、イノベーションなど11分野での協力計画の進捗を確認した。ロシアとは、貿易・投資協力計画やASEAN・ユーラシア経済委員会(EEC)との協力について議論された。中小零細企業のデジタル・トランスフォーメーション、電子商取引に関する協力を進める。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(ASEAN、タイ、インドネシア、インド、韓国、中国、香港、EU、英国、ロシア)

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