7月の物価上昇率は4.79%、2021年3月以来の低水準に
(メキシコ)
メキシコ発
2023年08月14日
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)の8月9日付プレスリリースによると、2023年の7月の全国消費者物価指数(INPC)上昇率(インフレ率)は0.48%、過去12カ月の伸び率(年率)は4.79%となった。INPC年間上昇率は2023年に入り鈍化傾向に転じており、2021年3月以来となる4%台まで低下した。7月のコアインフレ率(注)も6.64%まで低下した(添付資料図1参照)。5カ月連続の低下となったが、インフレ率と比べて下げ幅は小さい。
非コアインフレ率は、年率でマイナス0.67%を記録した。農畜産物は3.16%となり、特に畜産物においては前月の2.05%から0.00%まで低下した。エネルギー・公共料金も同様にマイナス3.90%まで低下している。一方で、全国生産者物価指数(INPP)は7月単月で0.26%、年率ではマイナス0.76%(前月はマイナス0.87%)となった。
コアインフレのさらなる低下が政策金利引き下げの条件
米国連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を0.25ポイント引き上げ、5.25~5.50%にすることを決定した(2023年7月27日記事参照)。しかし、メキシコのジョナサン・ヒース中央銀行副総裁は、8月2日に「たとえFRBが政策金利を引き上げたとしても、中銀は金融政策に関する絶対的なスタンスを変えるつもりはない」と述べ、メキシコにおける政策金利の決定に関して米国の政策金利と連動しないことを強調した。さらに、「コアインフレ率が次回の金融政策決定において考慮すべき要素となる」と発言した(「レフォルマ」紙8月2日)。
今回、米国の政策金利が利上げされたものの、中銀の政策金利は11.25%で、米国・メキシコ間での金利差、特に実質金利(政策金利とインフレ率の差)は依然として開いている(添付資料図2参照)。そのため、為替レートではペソ高基調が続いており、8月9日時点で対ドル為替レート終値は1ドル=17.06ペソを記録し、メキシコからの輸出に影響が出はじめている。中銀は8月10日のプレスリリースでインフレ率の見通しを発表し、2023年第3四半期のインフレ率は前回よりも0.3ポイント下方修正したものの、コアインフレ率は2023年の第4四半期以降で0.1ポイント上方修正した(添付資料図3参照)。コアインフレ率が全体のインフレ率のような低下傾向を見せない限り、メキシコの政策金利が維持され、米墨間の金利差を縮小する要因が乏しくなることが予想される。
(注)天候などによって価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
ビジネス短信 38c354d09b4a1e86