オーストリア保険会社ユニカ、ロシアから撤退

(オーストリア、ロシア)

ウィーン発

2023年08月28日

オーストリアの銀行大手ライファイゼン・バンク・インターナショナル(RBI)と保険会社ユニカは8月24日、合弁会社であるロシアの子会社ライファイゼン・ライフの売却およびロシアからの撤退を発表した。ライファイゼン・ライフは、ユニカが75%、RBIが25%出資し2009年に設立され、ライファイゼン銀行ロシアを通じて主に個人向け生命保険を販売していた。売却先はロシアの生命保険会社ルネサンス・ライフで、売却はロシア当局の手続きと規制に従って進められた。ロシア当局からの正式な承認はまだ下りていないが、6カ月以内には完了する見込みだ。売却額は非公開。

ユニカの国際顧客市場担当のウルフガング・キンドル取締役によると、同社はロシアのウクライナ侵攻後から新規事業や投資活動はほぼ停止し、満期になった個人の生命保険契約も延長していなかった。RBIと共に、ロシア事業に関してあらゆる選択肢を検討した結果、ライファイゼン・ライフを売却し、ロシアから撤退することを決定した。ユニカ・グループにとって、同社の売上高は、同グループの年間売上高の1%を占めるにすぎないため、影響は少ない。

ライファイゼン銀行の撤退は難航

一方、RBIの子会社ライファイゼン銀行ロシアの撤退は安易ではない。30年前に設立された同行は、ロシアで外資系最大の銀行で、制裁下でロシアの国際決済業務の大部分を担当しているため、ロシア当局によってシステム上重要な金融機関とされている。RBIは2022年に38億ユーロの純利益を得ており、その60%をライファイゼン銀行ロシアの利益が占めた。ライファイゼン銀行ロシアの規模が大きいことから、買収相手の候補も限られている。買収のための資金を調達できるロシア人や融資を提供できるロシア系銀行も欧米の制裁対象になっている。その上、ロシア当局が売却を許可しても、RBIにとっては大幅な損害となる可能性が高い。

このような中、RBIに対し、欧州中央銀行(ECB)、ウクライナ側などからはロシア事業を停止するようプレッシャーが高まっている。RBIのヨハン・シュトロブル最高経営責任者(CEO)は、RBIは現在、売却とスピンオフという2つの選択肢を検討しており、2023年末までに決定する予定と述べている。また、ロシアのウクライナ侵攻以降、RBIはロシアでの事業の大幅な縮小を続けており、2023年第2四半期(4~6月)の利益においては、ロシアの割合は35.1%に下がったと報告している。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア、ロシア)

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