アルゼンチン大統領予備選、右派候補ハビエル・ミレイ氏が勝利、事前予想を覆す

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年08月15日

8月13日、アルゼンチンで国政選挙の予備選挙(PASO)が行われた。大統領候補は、第3勢力と目された「自由前進」(LLA)のハビエル・ミレイ候補が事前予想を覆す形で躍進し、最も多くの票を集めた。事前予想で本命視されていた野党連合「変革のために共に」(JxC)は次点に沈んだ。そして与党連合「祖国のための同盟」(UP)は3番手に沈んだ。ミレイ候補の登場により、長年続いてきた「ペロン党対非ペロン党」の選挙の構図が大きく変わった。

PASOは、全党同時開放型義務的予備選挙(PASO)の略称で、国政選挙だけでなく一部の地方選挙でも導入されている。10月22日に行われる本選挙に参加する政党や候補者は必ずPASOに参加しなければならず、PASOで有効票と白票の合計の1.5%以上の得票率を得られなかった候補は、本選挙に参加できない。また、政党や政党連合がPASOまでに候補者名簿を一本化できなかった場合、PASOに複数の候補者名簿を提出し、PASOを通じて候補者名簿を一本化する。

第3勢力候補の躍進で上位2候補による決選投票の可能性高まる

最も注目を集めたのは大統領予備選では、15の政党・政党連合から27組の大統領・副大統領候補が立候補した。左派の与党連合UP、政権への復帰を狙う中道右派の野党連合JxC、新自由主義的な政策提案で若者の注目を集めるミレイ候補率いる右派のLLAのうち、どの政党・政党連合が勝利するのか、党内候補をPASOまでに一本化できなかったJxCでは、どの候補がPASOで勝利し、10月の本選挙に進むのかに注目が集まった。

選挙結果は添付資料の表のとおりで、政党別、候補者別ともにミレイ候補が最も多くの票を集め、政党別では次点が野党連合のJxC、候補者別では次点が与党連合UPのマッサ候補となった。JxCの候補者は、タカ派のブルリッチ候補に決まった。

事前の世論調査では、政党別ではJxCの優勢が伝えられており、次点にUP、ミレイ候補のLLAが3番手だったことから、国内メディアはLLAの勝利を驚きとともに伝えた。また、ミレイ候補が23州とブエノスアイレス自治市のうち16州において最も得票率が高かったことが注目された。伝統的に与党連合が強い北部諸州や南部パタゴニア諸州の一部でもミレイ候補が支持を集めた。

PASOにおける得票率が、白票を含む有効票の1.5%を下回った候補は、10月22日の本選挙に立候補することはできない。そしてPASOの結果、5組の候補が本選挙へ進むことになった。本選挙では1位となった候補が、(1)得票率45%以上、(2)得票率40%以上かつ次点の候補と10ポイント以上の差がある、のいずれかに該当すればそのまま当選となる。しかし、PASOでは3つの勢力の得票率が割れており、本選挙後の11月19日に上位2候補による決選投票が行われる可能性が高いとみられている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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