シンガポール政府、ALPS処理水放出に中立的

(シンガポール)

シンガポール発

2023年08月18日

シンガポール政府やメディアは、日本が計画している東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出に対し、冷静な対応を取っている。グレイス・フー持続可能性・環境相は83日、国会での議員からの質問に対して、ALPS処理水の放出が、シンガポール海域やその周辺の海水の水質に影響を与える可能性は低いと述べた(持続可能性・環境省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

また、フー持続可能性・環境相は、「食品庁(SFA)は日本を含めた海外からの輸入食品を対象にそれらの安全性を従来どおり監視しており、それらの監視結果について満足している」と表明した。さらに、同相はSFAによる監視について、「放射能だけでなく環境汚染など多種多様なリスクについて行っているものだ」とし、「監視にあたっては国際原子力機関(IAEA)による報告書や海外の食品安全当局の専門家による報告書も入手して行なっている」とした

現地の主要メディアでは、ALPS処理水放出に関する報道は限定的だ。87日付の地元紙「ストレーツ・タイムズ」では、「日本政府およびIAEAALPS処理水は安全であると言っているが、一部の国は食品汚染に懸念を示している」と他国メディアの報道ぶりの引用にとどまった。

取扱商品に応じて異なる、日本産食品取扱事業者の反応

他方、シンガポールでは、一部の日本食品取扱事業者の間で、ALPS処理水放出に伴う影響が見られる。ジェトロが815日までに行った、在シンガポールの日本食関連事業者への聞き取り調査によると、一部の日本産の水産品を取り扱う輸入卸や、鮮魚を提供する日本食レストラン関係者では、処理水の放出計画が報道で取り上げられたことが影響し、前年同期比で売り上げが減っている。

一方、日本産のスイーツや農産品、酒類を取り扱う事業者は、現時点で直接的な影響は受けていないと述べている。

(青沼秀人)

(シンガポール)

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