ネットゼロ実現に向け、クリーンエネルギー分野のイノベーション推進

(シンガポール)

シンガポール発

2023年07月14日

シンガポールのロー・イエンリン国務相(貿易産業担当)は77日、脱炭素化のためにもクリーエネルギー分野のイノベーションを推進し、専門人材を育成していく方針を示した。同国は202210月、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)とする目標を設定している(2022年10月31日記事参照)。

ロー国務相はこの日、エネルギー市場監督庁(EMA)が毎年開催するクリーンエネルギー分野新規技術に特化した産官学のイベント「エネルギー・イノベーション2023」に出席。同相はイベントでの演説で、「発電部門が現在、国内のCO2排出の40%を占める」と語り、「ネットゼロの目標達成には発電部門の脱炭素化が主要な柱になる」と強調した。

写真 エネルギー・イノベーション2023のイベントでスタートアップとの記念撮影に応じるロー・イエンリン国務相(右から2人目、ジェトロ撮影)

エネルギー・イノベーション2023のイベントでスタートアップとの記念撮影に応じるロー・イエンリン国務相(右から2人目、ジェトロ撮影)

EMAは同日、太陽光発電の普及を支える電力貯蔵システム(ESS)技術の研究や実証実験の助成金の提案依頼の公募を開始した〔締切日:9月14日、(注)〕。同庁がESSに特化したプロジェクト関連費用を支援する公募を行うのは2回目となる。

また、EMAと英国石油会社シェルは2019年以来、再生エネルギーや省エネ、低炭素の技術を持つスタートアップを支援している。このほか、同庁は地場環境技術会社エンビジョン・デジタル・インターナショナルと共同で2021年10月、地元の中小企業を対象とした再生エネルギーや省エネなどの技術公募を実施した。同庁は民間企業と連携して、クリーンエネルギー分野のスタートアップや中小企業の支援を積極化している。

クリーンエネルギー分野の労働力、2032年までに80%増

さらに、EMAが同日発表した最新統計によると、同国のクリーンエネルギー分野で働く労働者は、2022年の約1,500人から2032年に約2,700人へと80%増加する見通しだ。また、発電部門で働く労働者は同時期に800人増加すると見込んでいる。ロー国務相は演説の中で、「送電や配電、低炭素代替燃料や太陽光発電、スマートグリッド、スマートメーター、センサーの職種の需要が飛躍的に伸びると予想される」と指摘した。

(注)EMAによるESS研究プロジェクトへの助成金の公募の詳細は同庁のサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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