メルコスール首脳会合、ベネズエラの加盟資格と対中交渉スタンスで調整つかず

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール)

ブエノスアイレス発

2023年07月11日

アルゼンチン・ミシオネス州プエルト・イグアスで74日に開催された第62回メルコスール首脳会合では、EUメルコスール自由貿易協定(FTA)や、ベネズエラのメルコスール加盟資格を巡る人権問題、メルコスールの通商交渉体制の柔軟化などに話題が及んだ。ベネズエラは、2012年の正式加盟から4年以内にメルコスール規則を国内で制度化するという約束を履行できていないとの理由で、201612月に加盟資格停止通知を受けていた。ところが、メルコスールの機能強化と拡大を訴えていたルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ氏が率いるブラジル左派政権が20231月に誕生したことを受けて、ベネズエラの資格を再開する議論が始まっている。

同国で起きている人権問題について、パラグアイのマリオ・アブド・ベニテス大統領は「人権の二文字と真っ向からぶつかるスキャンダラスな事実だ」と憂慮した。ベネズエラでは、2024年に実施予定の大統領選挙に立候補することが有力視されていたマリア・コリーナ・マチャド元下院議員が公職から追放され、立候補を無効する措置が取られおり、ベニテス大統領はこうした事象に懸念を示した。

またメルコスールの対外通商交渉については、ウルグアイのルイス・ラカジェ・ポウ大統領は、加盟国が一体となって交渉した方が交渉力は高まり、より良い結果を引き出せると承知しているが、停滞することを懸念していると述べた。EUとのFTAについては、交渉開始から25年間も経過していることは現代社会では理屈に合わないことで、メルコスール次期議長国ブラジルのルーラ大統領が交渉を進展させることを期待すると述べた。対中FTAについては、他のメルコスール加盟国とともに交渉したいが、進展がないならば単独で交渉するとの従来の主張を繰り返した。また、ベネズエラの問題について「ベネズエラ政府が法的な理由ではなく、政治的な理由で候補者の1人の選挙への参加を妨げているならば、健全な民主主義を実現することはできないだろう」「ベネズエラの人々が健全な民主主義に移行できるよう、メルコスールは明確なシグナルを出さなければならない」と述べ、パラグアイのアブド・ベニテス大統領に同調した。74日付のアルゼンチン現地紙「ナシオン」(電子版)によると、ベネズエラの問題についてフェルナンデス大統領は、この問題はベネズエラ当事者が解決するべきで、他国と協力して対話の場を設けると述べた。

会合後、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ボリビアの各国首脳は共同声明に署名したが、メルコスールの柔軟化を主張するウルグアイは署名せず、同国外務省は独自の声明を発表した。

(西澤裕介)

(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール)

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