州間減税競争の収束を目的とした税制改革法案、下院で可決

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年07月25日

ブラジル下院議会は7月7日、2019年憲法改正法案45号(PEC45/2019)を可決した。この後、上院で審議される。同改正法案には、企業誘致を推進する州政府間の減税競争を解決する新たな規制枠組みが含まれている。ブラジルでは、多くの州政府が州税の商品流通サービス税(ICMS)を減税し、工場建設などを誘致している。PEC45の法案担当として下院議長に指名された下院議員のアギナルド・リベイロ氏は、州政府の多くは減税のために「財政の面で苦しんでいる」と述べ、現在のICMSによって生じている財政難の問題に取り組む必要性を強調した(7月4日付ブラジル政府系紙「アジェンシア・ブラジル」)。

対応策として、同法案では、ICMSと市税のサービス税(ISS)について、財サービス税(IBS)に統一して代替するという新たな構想がある(2023年7月19日記事参照)。IBSは現在のICMSとは異なり、商品の生産地ではなく消費地で課税するため、生産地の州政府が企業に税制優遇を与える意味が薄れてしまう。

下院の公式サイトによると、この構想には当初、多くの州知事が批判していたため、法案には、緩和策として既存のICMSの税制優遇措置を2032年まで認める項目も含まれている。減税分の負担のために税制優遇措置補償基金が設立され、2025年から2032年まで連邦政府から1,600億レアル(約4兆8,000億円、1レアル=約30円)が拠出され、各州政府の優遇措置に補填(ほてん)される。

また、ICMSの減税によるインセンティブ付加ができなくなる各州への対応策として、「地域開発基金」を設ける構想も同法案に含まれており、連邦政府は2029年から2032年までに800億レアル、2033年以降は毎年400億レアルを地域開発基金に拠出する。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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