全米自動車労組会長、労使交渉についてバイデン大統領と会談、メディア報道

(米国)

シカゴ発

2023年07月25日

全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン会長は7月19日、自動車大手3社〔ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスのデトロイト3〕との労使交渉について、ジョー・バイデン大統領とホワイトハウスで短時間会談した。ホワイトハウスの高官とUAWとの会談があると知ったバイデン大統領がフェイン会長との直接の対話を求めたという(「ヒル」電子版7月19日)。

UAWは7月13日からデトロイト3との労使交渉を開始し、従業員を二分する給与体系の廃止や、賃金をインフレ率と連動させる生計費調整(Cost of Living Adjustment, COLA)と公正な昇給の回復、電気自動車(EV)への移行に伴う雇用の確保を要求している(2023年7月18日記事参照)。経営側が要求を認めない場合はストライキも辞さない構えとされている。

バイデン政権がEV移行を推進する中で、フェイン会長は5月に「連邦政府は、労働者への条件やコミットメントなしに、膨大な連邦補助金をEV化に注いでいる。EV移行が底辺への競争(注)となる最大のリスクだ。われわれはいずれのコミットメントをする前に、国家のリーダシップがわれわれの側に立つことを見たい」と主張し、2024年の大統領選でのバイデン大統領支持を保留している(「ヒル」電子版5月4日)。産業界の幹部などは、フェイン会長がよりよい条件でデトロイト3との新たな労働協約を締結するために、バイデン大統領再選への支持を見送ることで政権に圧力をかけることを決定したのではないかとみている(「オートモーティブニュース」電子版7月21日)。UAWは歴史的に民主党を支持しており、2020年の大統領選でもバイデン大統領を支持した。史上最も労働組合寄りの大統領と自負しているバイデン大統領としては、UAW支持を得られないことは大きな痛手となる(「ヒル」電子版7月19日)。

UAWの発表によると、UAWは米国とカナダ、プエルトリコに40万人以上の正組合員、さらに58万人以上の退職組合員を擁する。このうち現在、デトロイト3の組合員は約15万人に上る。

(注)産業育成や外国企業の誘致を目的に、国家が規制緩和や減税などを行うことで、労働、自然環境、社会福祉などが最低水準へと向かうこと。

(星野香織)

(米国)

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