インド初の半導体製造べダンタ-フォクスコンが合弁を解消

(インド)

アーメダバード発

2023年07月13日

インド初の半導体製造として注目されていた、ベダンタ-フォクスコンの合弁企業(VFSL)は、7月10日に両社が声明を出し、双方の合意に基づき、合弁事業をこれ以上進めないことを決定したと複数の地元メディアが報じた(「フォーブス」紙ほか7月10日)。

両社ともに、インドは世界の半導体サプライチェーンを再構築する上で極めて重要な存在との認識に変わりはなく、今後は別々のパートナーとの提携の道を模索し、インドでの半導体製造事業を継続するとしたという。ベダンタは、既に他のパートナーと交渉中で、著名な集積デバイスメーカーのIntegrated Device Manufacturer(IDM)から、40ナノメーター(nm)の生産グレードの技術ライセンスを取得済みだとし、追って28nmの生産グレードの技術ライセンスも取得する予定だと説明した(「エコノミック・タイムズ」紙7月11日)。一方、フォクスコンも、適切なパートナーを探しており、インドでの半導体工場を設立する決意は固く、「現在、申請書の提出に向け取り組んでいる」と述べている(「ビジネス・スタンダード」紙7月11日)。

両社とも、新たなパートナー名について具体的な言及はしていないが、既に6月末の時点で、フォクスコンが新たなパートナー候補として、インドの財閥系企業にも声を掛け始めているとの報道もみられた(「エコノミック・タイムズ」紙7月11日)。

今回の合弁解消の明確な理由は公表されていないが、政府はかねて補助金申請のコスト計算について疑義を呈しており、申請承認が遅れていたことや、政府やフォクスコンがベダンタの財務状況を憂慮していたこと、また両社の企業文化に大きな相違があり、過去数カ月の間に両社間での意見の相違が生じていたことなどが原因ではないかと指摘されている。

この間、政府はフォクスコンに、合弁の主導権を握る可能性について示唆、さらには、別のパートナーを模索することを働きかけていたともいわれている。さらに、政府は半導体製造奨励制度を改定し、6月1日から新規案件の募集を再開する一方で、VFSLに対して再申請を行うよう要請していた。これに対しVFSLは、40nmの技術ノードの半導体製造での修正申請を提出したと発表していた(2023年7月3日記事参照)。

インドの半導体製造ハブの構築を目指すグジャラート州については、6月のモディ首相の訪米時に、米国マイクロンが同州に進出し、川下分野の「半導体組み立て・テスト工場」を建設すると発表したばかりだ(2023年6月26日記事参照)。他方、今回の合弁解消によって、川上分野のアイコンだった「インド初の半導体製造事業」には空白が生じたかたちだ。

(古川毅彦)

(インド)

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