国境特別経済開発区(SEZ)の最新の開発・投資状況

(タイ)

バンコク発

2023年07月24日

タイ国家経済社会開発庁(NESDC)は7月7日、国境特別経済開発区(SEZ)10カ所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(添付資料「図 タイの10カ所の特別経済開発区」、「表1 SEZの投資状況および各SEZの土地開発の進捗」参照)の最新開発と投資進捗状況を公表した。国境SEZ開発は2015年以降、政府が進めており、各SEZにはタイ投資委員会(BOI)、タイ工業団地公社(IEAT)、歳入局、関税局がそれぞれ投資恩典を設けている(2022年10月17日記事参照)。

SEZ10カ所に対する2015年から2023年6月までの累積投資額(タイ政府投資を含む)は約446億バーツ(約1,829億円、1バーツ=約4.1円)となっている。他方、上記の投資恩典を得ているか否かにかかわらず、SEZに登記した企業数は2015年から2023年6月までに6,845社(資本金合計130億バーツ、うち中小企業が98%)で、業種は建設や物流、衣類の製造、発電、ホテルなどだった。同期間の投資企業数(登記ベース)は、ターク県(1,595社)、チェンライ県(1,476社)、ノンカイ県(1,102社)、ムクダハン県(893社)、ナコンパノム県(653社)の順に多い。

IEATのサケオ県とソンクラー県のSEZへの投資金額は約57億バーツとなり、2022年9月まで(約27億バーツ)と比べて約2.1倍に拡大した。トラート県とカンチャナブリ県、ナコンパノム県の土地開発への民間企業による投資金額は、約51億バーツで、3年前と変わっていない。

個別の投資恩典の利用状況については、BOIが認可して投資実施済みの案件は76件、投資金額は約202億バーツとなっている。主な業種は衣類、プラスチック製品、家畜飼料、自動車、機械・同部品、医療用ゴム手袋の製造などとなっている。申請ベースでは113件、約292億バーツで、地域別ではタイとの国境貿易が最も盛んなマレーシアと国境を接するソンクラー県への投資が21件、約92億バーツとなり、金額ベースで31.5%を占め、最も多い。

外資によるBOI投資申請をみると、医療用ゴム手袋やプラスチック製品の製造などで34件、約48億バーツとなり、申請総額の16.4%を占めている。国・地域別の投資状況は添付資料表2を参照。投資を呼び込むために、BOIは奨励事業の変更や追加、中小企業、スタートアップ企業への支援などを行う予定。

さらに、関税局の投資恩典(注)利用申請は、製造・商業用のフリーゾーンの設立、保税倉庫の設立の13件、約5億バーツとなっている。

SEZ入居企業は、上記の関税局の投資恩典や、中小企業の中古機械使用許可などの恩典だけでなく、地理的な優位性を生かし、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど近隣諸国からの労働者も雇用することができ、労働者不足問題の解決と人件費削減のメリットがある。SEZで働く近隣諸国からの外国人労働者数は、2017年10月から2023年5月までの累計で、約56万人に達している。また、投資・近隣諸国労働者の雇用を円滑に進めるために、各SEZにワンストップサービスセンター(OSS)が設置されている。

(注)保税倉庫を設立する場合、申請者の資本金を1,000万バーツ以上から500万バーツ以上に減額する。フリーゾーンを設立する場合、申請者の資本金を6,000万バーツ以上から1,000万バーツ以上に減額する。

(高谷浩一、ナパッサワン・ブンサンサーム)

(タイ)

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