水資源利用認可法改正案、パブリックコメント受け付け終了

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2023年07月24日

南アフリカ共和国の水・衛生省(DWS)は、「水資源利用認可申請に係る手続き要件法案」の改正にあたり、同法案に対するパブリックコメントの受け付けを締め切った。5月19日に提出された同法案は、現在の人種的に偏りのある水資源配分の是正を目指し改正するもので、法案に対するパブリックコメントを60日間受け付けると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。改正により、今後、水資源利用申請をする農家や農業法人(林業を含む)は使用する水の量に応じて、その農場あるいは農業法人の所有権を最大75%まで黒人が保有するよう義務付けられる。

1904年に設立された国内最大の農業団体であるアグリエスエー(AgriSA)は6月1日、法案が可決された場合、農業セクターに壊滅的な打撃を与えるとして反対を表明した。また、国有企業や鉱業セクターを対象外としていることに対し、農林業のみがやり玉に上げられていると批判した。また、ワインや柑橘(かんきつ)類の生産者などが集中する西ケープ州も6月8日、反対声明を発表した。今後、DWSが反対意見を踏まえ、どのように法案を見直すのか注目される。

南アでは歴史的な経緯から農場主・経営者の大半が白人で、労働者として黒人が雇われていたため、白人が大半の水資源を確保していた。アパルトヘイト政策が終わった後も、その時点で権利を有する経営者らは引き続き水資源を利用が可能だった。DWSによると、1998年以降に認可された水資源およそ4憶1,200万リットルのうち、76%は白人経営者が利用権利を保持しており、人種間での不均衡が長らく問題視されている。

2022年のGDPを分野別にみると、農業は全体の1.5%だが、輸出用農産物の生産が多く、特に出荷量でみると南アは世界2位の柑橘類輸出国だ。日本も、南アから年間2,500万ドルの柑橘を輸入しており、米国、オーストラリアに次ぐ3位の輸入元だ。

(新田菜穂子)

(南アフリカ共和国)

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