1~5月の石炭輸出量、前年同期比4倍に増加

(モンゴル)

北京発

2023年07月06日

モンゴル税関庁が発表した2023年1~5月の貿易統計(速報値)によると、石炭(HSコード:2701)の輸出量が前年同期比4倍の2,306万トン、輸出額が同2.1倍の36億2,697万ドルだった。

石炭輸出量の月次推移(添付資料図1参照)をみると、中国での厳格な新型コロナウイルス感染予防・抑制措置によって中国との国境貿易が制限されるとともに、人的接触を避けるためにバルク輸送が禁止され、コンテナ輸送に切り替えたことで、2021年から2022年前半は大きく落ち込んでいた。一方で、2022年7月からモンゴル側ガシューンスハイト国境税関~中国側ガンツモド国境税関の間に無人輸送車(AGV)が導入され、輸出量は同年8月以降毎月400万トン前後まで回復した。また、12月からはモンゴル側シベーフレン国境税関~中国側セヘ国境税関間でもAGVが導入された(注1)。その後、石炭汚職(注2)の取り締まり強化の一環として、石炭取引をモンゴル証券取引所で公開取引にすることで、これまで密輸によってモンゴルの税関では計上されていなかった輸出が統計に含まれるようになって輸出量・輸出額が増加、2023年3月には過去最大の月間600万トンに急増した。その後、若干減少しているものの、5月も単月で400万トン台の水準を維持している。

金額ベースの月次推移(添付資料図2参照)でも、数量ベースと似た動きを示しているが、石炭価格の下落に伴い、2023年5月には前年同月比11.8%減となっている(注3)。

好調な石炭輸出を追い風に、モンゴルの2023年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率は前年同期比7.9%を記録した(2023年6月12日記事参照)。しかし、モンゴルの石炭輸出は主な輸出先の中国の景気動向に大きく左右されるため、直近では経済回復の勢いが鈍化している中国の状況(2023年6月20日記事参照)によっては、今後も好調を維持できるか否かは不透明だ。

(注1)シベーフレン~セヘ間では2023年5月27日から鉄道(区間距離7.1キロ)の建設も始まった。同鉄道は「モンゴル・ロシア・中国経済回廊」の西部縦貫鉄道(ロシア側ツァガーントルゴイ国境税関~モンゴル側アルツソーリ国境税関~モンゴル側シベーフレン国境税関~中国側セヘ国境税関、1,250キロ)を構成する一部となる。

(注2)2010年ごろから石炭が密輸されていることは、2013年の国境検問所の内部調査の報告書でも指摘されていたが、2022年11月9日にヒシゲー・ニャムバータル法務内務相が、警察庁と汚職防止庁が合同で石炭の密輸について捜査を進めていることを発表した。不満を募らせた国民は12月4日から石炭汚職に関わった者への責任追及と氏名の公開を求め、1カ月以上ウランバートル市中心部のスフバートル広場でデモを行った。12月13日にモンゴル汚職防止庁が石炭の採掘や輸送、輸出の各段階のさまざまな不正を根拠に、35人を起訴し、事件に直接または間接的に関与した容疑で取り調べ中の国会議員や元国会議員、元大統領、県知事、国営企業元幹部などの氏名を公開した。6月28日時点で裁判所による法的責任の追及は行われていない。

(注3)2022年5月にモンゴルが輸出した石炭の単価は1トン平均332ドルだったが、2023年5月には同141ドルに下落している。

(藤井一範)

(モンゴル)

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