企業のデジタル化やエネルギー転換向けの投資促進に向けた税制改革を発表

(ルクセンブルク)

ブリュッセル発

2023年07月19日

ルクセンブルク政府は7月12日、投資にかかる税制優遇を目的とした税制改革法案を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2024年課税年度から、投資に対する最大税額控除額の比率を現状の8%から12%に引き上げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)や、環境負荷の軽減につながるエネルギー転換に関する投資や支出も、税制控除の対象とする。

今回の法案は、2022年9月に締結された、政府とルクセンブルク雇用者協会および3つの業界団体の合意(2022年10月7日記事参照)に基づくもので、今後、立法手続きを経て施行される。

具体的には、ルクセンブルクに設立された企業による投資を維持し、より活性化させるため、減価償却資産(機械や設備、情報通信機器の取得など)への投資に対する控除率を、現行の8%から12%に引き上げる。

また、DXやエネルギー転換、環境負荷の軽減につながる投資については、追加控除として6%分を上乗せし、控除率を18%とする。これまで控除の対象ではなかった営業費用(従業員の研修費用、企業診断・監査費用、クラウドコンピューティング関連費用、ソフトウエアライセンス料など)についても、18%の税額控除の対象とする。

本法案では、追加控除の対象を具体的に解説している。DXについては、生産性向上につながるプロセス全体の改善や、新しい価値を創出するための革新的なビジネスモデルの導入などが対象となる。事例として、デジタルツインによる3Dプリンター技術の向上や、リスク管理における人工知能(AI)の活用などが挙げられている。エネルギー転換・環境分野については、生産過程のエネルギー効率改善や脱炭素化、再生可能エネルギーの生産・貯蔵などにつながるプロジェクトが対象となる。

また、本法案の対象となる投資が多岐にわたることから、認証・証明制度の導入を提案している。企業はまず、プロジェクト案を経済大臣に提出する。その後、諮問委員会からの意見を踏まえた上で、経済大臣は、財務、環境、エネルギー担当の各大臣と共同で、プロジェクトの適格性を認証する。税務申告に際しては、事業年度に生じた投資と営業費用の実態を経済大臣に報告し、証明書の交付を受ける必要がある。

ユリコ・バッケス財務相は、本改革案が、控除率の単なる引き上げにとどまらず、産業界のDXやエネルギー転換を推進する明確な意図の上で、これらの分野に対し追加的な優遇措置を行うとした。これにより、ルクセンブルク経済の競争力をさらに強化できると、その戦略的な背景を説明した。

(大中登紀子)

(ルクセンブルク)

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