ネパール、インド経由でバングラデシュに電力輸出へ

(ネパール、インド、バングラデシュ)

アジア大洋州課

2023年06月08日

ネパールのプシュパ・カマル・ダハル(Pushpa Kamal Dahal)首相は6月1日、2022年12月の首相就任以降初めてインドを訪問し、ネパールの水力発電をインド領を経由してバングラデシュに輸出することを含む、エネルギーと輸送に関する一連の協定に調印した。

現地報道によると、インドのビナイ・モハン・クワトラ外務次官は合意の目的について、インドの送電網を経由し、ネパールからバングラデシュに40メガワット(MW)の電力を送ることだとメディアに語った。今回の電力と電力貿易は南アジア地域の結び付きを強化し、非常に重要な手段として活用する最初の取り組みだと述べた(「ザ・デーリー・スター」紙6月2日)。

ネパールとバングラデシュは国境を接しておらず、両国間にインドを挟むため、貿易を開始するにはインドの承認が必要だった。両国は近年、電力貿易を許可するようインドに要請しており、バングラデシュのシェイク・ハシナ首相は2022年9月のインド公式訪問時にも、インド経由でネパールやブータンから電力を輸入する問題を提起していた。

バングラデシュの専門家によると、今回のプロジェクトは、「環ベンガル湾多分野経済技術協力」(Bay of Bengal Multi-Sectoral Economic and Technical Cooperation:BIMSTEC、注1)とBBIN(注2)が数年前から取り組んでいる南アジアの電力分野でのサブリージョン協力に向けた大きな一歩になるとの見方を示している。

ネパールは最近までインドから電力を輸入して国内需要を賄っていたが、現在では国内では供給過多となっている。他方、バングラデシュでは2022年7月以降、ディーゼル燃料輸入規制による計画停電が実施されており、深刻な電力不足が続いている(2022年7月20日2023年6月5日記事参照)。

(注1)1997年に設立され、東南ベンガル湾周辺の南アジアと東南アジア7カ国による2つの経済圏をまたいで組織されたサブリージョナルな枠組み。常設事務局はバングラデシュのダッカ。

(注2)バングラデシュ、ブータン、インド、ネパールの4カ国で1996年に開始したイニシアチブ。

(寺島かほる)

(ネパール、インド、バングラデシュ)

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