英労働党がエネルギー政策発表、クリーンエネルギー公社設立など提示

(英国)

ロンドン発

2023年06月29日

英国の野党・労働党は、次回総選挙で政権を獲得した場合の新たなエネルギー政策を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。労働党のキア・スターマー党首が6月19日、スコットランド・エディンバラでの演説で明らかにした。エネルギー料金の削減や、良質な雇用の創出、エネルギー安全保障の提供、次世代のための環境保護を実現するとしている(労働党ウェブサイト参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

具体的な取り組みは次のとおり。

  • 2030年までに安価なゼロカーボン電力システムを実現することで、家庭のエネルギー料金を年間最大1,400ポンド(約25万6,200円、1ポンド=約183円)、企業のエネルギー料金を530億ポンド削減。
  • 10年間で1,900万戸の住宅を改修し、断熱などの省エネ対策を導入する「ウォーム・ホームズ」計画を実現。
  • エネルギー安全保障の実現に向け、新たな公営のクリーンエネルギー会社「グレート・ブリティッシュ・エナジー(GBE)」を設立。
  • グリーン産業に投資し、良質な雇用を創出するための新たな基金「ナショナル・ウエルス・ファンド」を創設。基金には公的資金を投入し、重要インフラへのさらなる民間投資を誘導。
  • クリーンエネルギー開発事業者が工業地帯や沿岸地域に投資した場合に「英国雇用ボーナス」を提供。洋上風力、陸上風力、太陽光、水素、炭素回収・貯留(CCS)などの技術を開発する企業に対し、プロジェクト初期の5年間で最大5億ポンドを割り当て、技術を最も必要とする地域へと投資を誘導。

クリーンエネルギーに焦点を当てるこの計画では、北海沖の石油・ガス採掘について、新規のライセンス付与を行わないことを掲げた。洋上エネルギー産業の業界団体「オフショア・エナジーズUK」のデビッド・ホワイトハウス最高経営責任者(CEO)は、今回の政策で石油・ガス産業の重要な役割や労働者に対する労働党の認識を歓迎しつつも、石油・ガスの新規採掘ライセンス禁止については時期尚早で、エネルギー安全保障、雇用、ネットゼロの実現に向けた試みを損なうと警告した。

なお、複数の報道によると、労働党は6月初旬に、高金利を背景として、グリーン産業の構築のために10年間にわたって毎年28億ポンド拠出するという当初の旗艦公約を撤回したとされている。

(菅野真)

(英国)

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